「伝説のエンジニア」が明かすエヌビディアの死角 ラピダスや孫正義氏の半導体戦略はどう見る?

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――あなたがAMD時代に開発したCPUは、インテルから激しくシェアを奪いました。当時のインテルと言えば今のエヌビディアのように市場を支配する企業でしたが、どうやって弱点を見つけたのですか。

当時のインテルの開発チームは大きすぎて、製品はユーザーにとって複雑で制約の多いものになっていた。1000人のエンジニアがそれぞれ機能を追加したら、複雑な仕様になってしまう。何から何までお金をかけすぎた結果、高い製品が生まれていた。

支配的な立場に立った企業は、徐々に販売価格を上げて高いマージン(利益率)をほしいままにする。ある時点までは自然なことだが、いずれ多くの顧客が耐えかねて、代替品を望み始めることになる。そのときに私たち小さなチームは、顧客から要望やアドバイスを聞いて、新しい選択肢を提示したわけだ。

現在、エヌビディアのマージンは非常に高く、誰もが代替手段を求め始めている。こうなってくると、顧客はサプライヤー(半導体メーカー)に協力的ではなくなってくるんだよ。

――そしてエヌビディアは誰かに取って代わられる?

未来については何とも言えない。ただあの会社にとって一つ圧倒的に有利なのは、優れた創業者がまだ健在だということだ。

ラピダスへの懸念

――テンストレントはラピダスと協業しています。しかしラピダスについて、日本の半導体業界関係者の多くは懐疑的な目で見ています。あなたはラピダスが成功すると思いますか。

私たちは半導体の製造委託先としてまずグローバル・ファウンドリーズを選んだ。来月にはTSMCを使う。その次はサムスン電子で、さらにその先にラピダスで生産する予定だ。

私が知る限り、ラピダスは他よりもスピード重視のファウンドリー(製造受託企業)だ。それが気に入った。市場が急速に変化しているときは、設計から製造までのスピードが重要だからだ。ラピダスがうまくいくことを私は祈っている。

ただ懸念は、TSMCと同じようなことをしようとしないか、ということだ。ラピダスは2ナノメートル世代の先端ラインを建設するというが、それは良くもあり悪くもある。相手と同じことをする限り、予想以上の大きな成功は起こり得ない。

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