「日本の水産物」中国向け消失も"輸出増加"のなぜ ホタテや他の魚種はその後どうなったのか?

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それが、日本をはじめとした国々の加工ノウハウが中国に移っていきました。そして他国のトレーダーなどに原料を持ち込んでもらわなくても、すでに中国側が独自で買い付けができるようになっています。

また、自国の輸入水産物に対する需要も増えています。こうなってくると、中国の水産加工の位置づけは、「世界の水産加工場」から、自国と輸出先の両方を見ながら水産物原料を買い付ける強い立場に変わってきます。

水産物の輸入はどんどん減少

次の表は世界の水産物輸入金額を示しています。オレンジ色の折れ線(赤い矢印)グラフが日本です。2006年まで、日本は世界最大の水産物輸入国でした。現在では、EUを個々の国とした場合、アメリカ・中国に次ぐ第3位です。

水産物輸入金額推移(出所) Global note

傾向を見れば一目瞭然ですが、今後も世界全体の水産物輸入の需要増を背景に、日本の水産物輸入量は減少していきます。そして中長期的には、輸入単価は上昇を続けることになります。

世界の水産物需要は今後も確実に増えていきます。水産物輸出は成長産業です。しかしながら、そのもとなる水産資源があってこそです。自国の水産資源管理を科学に基づいて行い、付加価値の高い水産物を輸出して行くことが重要です。

また、輸出だけでなく国内への供給も同時に重要であることは言うまでもありません。そしてその両者を実現するためには資源の持続性・サステナビリティが不可欠であることを最後に付け加えておきます。

片野 歩 Fisk Japan

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かたの あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)他。

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