中国の鋼材の輸出量が大幅に増加している。中国海関総署(税関)が1月12日に発表したデータによれば、2023年の鋼材輸出量は前年比36.2%増の9026万4000トンに上った。ところが金額ベースで見ると、2023年の鋼材の輸出額は前年比8.3%減の845億5560万ドル(約12兆3065億円)と逆に減少した。
輸出量増加の背景には、主に2つの要因がある。その第1は国内需要の低迷だ。政府系シンクタンクの冶金工業計画研究院の推計によれば、国内の建設業の鋼材消費量は(不動産不況による建築プロジェクト減少で)2023年は5億600万トンにとどまり、前年比4.8%減少。その影響は大きく、鋼材の国内消費の総量は8億9000万トンと同3.3%減少した模様だ。
第2の要因は供給側の生産調整の遅れだ。国内需要の縮小にもかかわらず、中国の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量は若干ながら増加している。国家統計局のデータによれば、2023年1月から11月までの国内の粗鋼生産量は累計9億5214万トンと、前年同期比1.5%増加した。
高まる貿易摩擦リスク
高水準の粗鋼生産が続くなか、海外からの原料の輸入も安定的に増えている。海関総署のデータによれば、2023年の鉄鉱石の輸入量は11億7900万トンと前年比6.6%増加した。
上述の2つの要因から浮かび上がるのは、国内市場でさばききれない鋼材が海外に安値で輸出されている構図だ。中国鉄鋼工業協会が1月3日に発表したレポートによれば、鋼材輸出量の上位3品目はメッキ鋼板、中板の幅広鋼板コイル、熱間圧延の薄板の幅広鋼板コイルとなっている。それらの2023年1月から11月までの輸出量は、前年同期比でそれぞれ23.3%、76.9%、90.1%の増加を記録した。
「中国の鋼材輸出拡大を受けて、すでに世界の5カ国が(アンチダンピングなどの)貿易救済措置の調査に着手している」。中国鉄鋼工業協会はレポートのなかで、今後の貿易摩擦拡大のリスクに警鐘を鳴らした。
一方、冶金工業計画研究院は「(世界で頻発する)地政学的な対立の高まりが中国の鋼材輸出のマイナス要因になり、2024年の輸出量は若干減少する可能性が高い」と予想している。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は1月12日
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