頂上付近が雪に覆われた標高4000メートルを超える山々に、生命線のように張り巡らされた道。まるで蟻が大きな壁を避けながら進むかのように描かれた、くねくねとうねった一本線。
古びた6人乗りのバンは、ガタガタと揺さぶられながら、その悪路を進んでいた。
目指すは、雪解けの夏、限られた数カ月だけ通行が許可されるスピティバレー。「スピティ」とは、チベット語で「中間の地」を意味し、インドとチベットの境界に位置することを示している。
その場所は、チベット仏教の信者たちが暮らす辺境の土地であり、最南端のカンニヤクマリから始まった「インド縦断の旅」の終着点でもある。
インド縦断の最終地としてここを選んだのにはいくつかの理由がある。ひとつはギックリ腰だ。
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