「アリババからシフト」孫正義氏とマー氏の関係 巨大企業の経営者が共に歩んできた道のり
SBGの発表の数日前、ニューヨーク・タイムズやアリババ傘下の中国英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は、マー氏が香港市場で株式5000万ドル(約75億円)相当を追加取得し、筆頭株主になったと報じた。
アリババ創業時からマー氏の右腕を務め、2023年6月にアリババ会長に就いたジョセフ・ツァイ(蔡崇信)氏も、資産管理会社を通じてアメリカで上場する株式を1億5100ドル分(約230億円)取得。2人合わせた株式の保有比率は約7%に上昇したという。
2019年にアリババ会長を退任したマー氏は、保有する同社株を少しずつ売却し、持ち分を減らしていた。
2020年11月にアリババ金融子会社「アント・グループ」の上場が中国当局の「指導」によって直前で延期となるなど、当局との関係悪化も表面化し、マー氏が公の場に姿を現すことも激減した。
ツァイ氏もマー氏と足並みをそろえるように同社の持ち株比率を減らし、アメリカ・NBAチームのオーナーに就くなどアリババの経営から距離を置きつつあった。
ビジョン・ファンドで巨額の赤字を出し、虎の子だったアリババ株の売却を迫られたSBGは孫氏の後継者候補が浮かんでは消え、孫氏自ら経営のタクトを振り続ける。
一方マー氏は早くから後継者育成に取り組み、すっぱりと引退したが、当局の圧力や競合の台頭など複数の逆風でアリババの経営が混迷する中で、社内のチャットで時折発言するようになるなど、再び会社との距離が近づいている。
マー氏は孫氏を5分で落とした
孫氏とマー氏の物語は25年前に幕を開けた。その物語はツァイ氏がいなければ始まらなかった。
マー氏の自宅兼事務所だったアパートの一室でアリババが誕生したのは1999年3月。数カ月後に金融街のエリートだったツァイ氏がジョインし、9月に会社として登記した。
アリババはそれまで40回近く出資を断られていたが、ツァイ氏の旧友を通じ同年10月にゴールドマン・サックス(GS)などから500万ドル(約7億5000万円)の出資を受けた。
「GSが出資したベンチャー企業」のブランドを得たアリババは、アメリカのインターネットバブルの陰りを察知して、市場の黎明期にあった中国の有望企業を探していた孫氏の目に留まることとなった。
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