「アリババからシフト」孫正義氏とマー氏の関係 巨大企業の経営者が共に歩んできた道のり
孫氏はマー氏と会って投資を即決した。1995年に出資したアメリカ・ヤフーとアリババが後に世界的なIT企業に成長したことで孫氏の名声は大きく高まり、「マーが孫正義を5分で落とした」(中国では6分と言われている)逸話も多くの人が知るところとなった。
孫氏は2019年12月に東京大学で行われたマー氏との対談において、「投資を決めたのは(5分ではなく)10分だったかもしれない」と当時を振り返った。
孫氏によると、投資候補の20社が10分ずつプレゼンし、半分ほどが終わったところでマーの出番がやってきた。
「ジャックはお金は必要ないと言うし、ビジネスモデルもなかった。ほかの人たちはビジネスモデル、お金のこと、自分たちの事業について語っていたが、ジャックは、哲学について語った」
ジャックは横から、「実はその直前に(GSから)500万ドルを調達していて、お金は必要ないと思ったんだ」と補足した。
初対面の席では、マー氏が5分ほど話を続けたところで孫氏が遮り、「わかった、お金を出す」「いくら必要か」と語りかけた。同氏は「変な人だなあ」と思ったという。GSから500万ドルの投資を受け満足していたマー氏は、孫氏に5000万ドルを出資すると言われて驚き、「10分の1でいい」と答えたという。
最終的に、マー氏とツァイ氏は2000万ドル(約30億円)の出資を受けることで、話をまとめた。
「素晴らしいCFO(ツァイ氏)がいたから決断できました」マー氏は東大での対談で、そう語った。
孫氏はさまざまな場で、マー氏の魅力を語っている。アリババの売り上げやビジネスモデルではなく、マー氏の目を見て、人を動かす力を持った生まれながらのリーダーと判断し、お金を使わせることに決めたという。
74億円が9.7兆円に
SBGの後藤芳光専務執行役員CFOは2022年の振り返りで、
「2000年以来総額74億円を投じたアリババが、23年間で総額9.7兆円の資金を生み出した」
「当時売上高がゼロだったアリババへの投資を決めた孫と、優れた経営手腕で中国での事業成長に挑んだジャック・マー氏が、相互に成長しながら残した実績は、歴史に残る素晴らしいウィンウィンの関係」と記し、「アリババの貢献には感謝しかありません」と続けた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら