こうした巻き込みは、職場や学校では起こりにくく、割と自制できている。そのぶんストレスが家族に跳ね返ってきやすいのだという。それゆえ、「巻き込まれる家族への影響、負担感は大きく、その支援も必要です」(清水さん)という。
医療機関を受診する多くの人は、本人が強迫症状によって日常機能に支障が出て困っている場合だが、家族が困って専門の機関に相談に来る場合もあるそうだ。
治療は抗うつ薬と認知行動療法
では、精神科ではどのような診療が行われるのか。
「診断では、まず強迫観念や強迫行為があるか、その程度はどうか、いつから始まったかなどを、問診や『Y-BOCS(エールブラウン強迫観念・強迫行為評価スケール)』で明らかにしていきます」と清水さん。
強迫性障害の治療は、本人や家族との相談と同意の上、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使ったり、強迫観念が起こす不安と向き合い、強迫行為を止める認知行動療法を行ったりしていく。ただし、残念ながら認知行動療法を保険診療で行う医療機関は少なく、清水さんの所属する千葉大学医学部附属病院認知行動療法センターは自費だ。
しかも、こうした治療でも十分に改善できず、病気との付き合いが長く続く場合もある。
佐藤二朗さんはXで、たくさんの励ましに感謝しつつ「病含め僕。病ゆえの『力』を信じよう。いつか病に礼を言えるよう」と記している。このように病気との共存を考えることも大切だ。清水さんはこうアドバイスする。
「先に挙げた脳内の円グラフではありませんが、頭の中を強迫のことでいっぱいにするのではなく、大事な人間関係、大事な趣味、大事な仕事などの割合を増やしてほしい」
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