その1つが、1日のなかで大事な予定を優先的に入れる、という方法だ。
「外出して、人と交流する予定を決めたり、趣味を楽しんだりする時間をとったりすると、自然と1日あたりの強迫症状にかける時間を減らすことができます。大事な付き合いや楽しみの時間を優先し、強迫観念や強迫行為に使う時間がもったいない、タイパ(タイム・パフォーマンス)が悪いとすることです」(清水さん)
食事のときに、汚れが広がってしまうという強迫観念が浮かんできても、その脅しには付き合わず、優先事項として、「家族との楽しい会話を楽しみ、食材を味わい、食レポをする」といった生活に変えてみる。そうやって脳内の円グラフの比重を切り替えていくことが大切だ。
告白した勇気に感謝したい
今回の佐藤さんのカミングアウトについて、清水さんは「その勇気に感謝の気持ちを感じている」そうだ。
「強迫性障害はなかなか病気と認知されにくい。多くの人に知ってもらえるきっかけになったとともに、『病ゆえの〈力〉』とも言ってくれていて、強迫性障害の診療をする専門家からすると、とてもありがたいです」
症状が出てから、医療機関で治療を受けるまでの期間を「未治療期間」といい、強迫性障害は平均7年という報告もある。治療なしでは、本人も周囲もつらい状況で疲弊してしまう。
「不安になる考えが繰り返し襲ってきて、何か対処の行為をしないと治まらない。1日中、そんなことの繰り返しで日常生活が回らないようであれば、一度、専門家に相談してみるといいかもしれません」(清水さん)
(取材・文/伊波達也)
清水栄司医師
1990年、千葉大学医学部卒業後、同附属病院にて精神科医として勤務。同年、千葉大学大学院医学研究科博士課程(内科系精神医学)修了。1997年、アメリカプリンストン大学分子生物学講座客員研究員。2005年、千葉大学大学院医学研究院助教授。2006年、千葉大学大学院医学研究院神経情報統合生理学(現認知行動生理学)教授。2011年、千葉大学子どものこころ発達研究センターセンター長。2016年から現職。所属学会は日本認知・行動療法学代議員、日本不安症学会理事、日本脳科学会評議員、日本精神神経学会ほか。著書は『認知行動療法でつくる思考・感情・行動の好循環』(法研)、『自分でできる認知行動療法 うつと不安の克服法』(星和書店)ほか多数。
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