"久遠チョコ"バラ売りでヒットの意外なきっかけ 面白がってくれた百貨店のカリスマバイヤー

✎ 1 ✎ 2
拡大
縮小

その後も、うめだ阪急のバレンタイン催事には連続して出店。途中、新機軸を打ち出そうと、生チョコやボンボンショコラ(なかにフィリングという詰め物をしたひと口チョコ)に手を広げようとした年もあった。

そんな試みには興味を示さず、「お客さんが足を止めて会話を楽しみ、好きなものを1枚、2枚と買っていくのが、久遠チョコレートのよさなのよ」と優しく諭してくれる高見さんなのだった。

そして2024年のうめだ阪急のバレンタイン催事のコンセプト自体が「マルシェ」に。市場(マルシェ)を回るように、各ブランドがバラ売りしているチョコレートをお客さんが楽しみながら一つひとつ選ぶ、というテーマになったのだ。久遠チョコレートのスタイルが認められたようで誇らしい。

絵本みたいな3枚セットがヒット

ある時、バラ売りのテリーヌチョコレートを選ぶお客さんを見ていて、1つの場面が思い浮かんだ。

1枚手に取っては考えて戻し、次の1枚を手に取ってはまた戻し、を繰り返しているお客さんの姿に、書店であれこれ迷いながら本選びをしているシーンを連想したのだ。

そこで閃いたのは、テリーヌチョコレートを3枚セットにしてタイトルをつけて、絵本のようにして売るのはどうだろう、ということだった。

自信のなさから1枚ずつ買えるのをテリーヌチョコレートの売りにしていたが、そろそろ次のステージに行ってもいいのでは、と考えていた頃だった。

そこで、2023年の百貨店のバレンタイン催事で販売したのが、「QUONテリーヌ3枚セット」。

テーマに合わせて3種のテリーヌチョコレートをセットにし、タイトルをつけて絵本のようなパッケージをデザインしてもらった。背表紙が見えるように縦に並べるだけではなく、表紙を見せて陳列する“面陳”や“平積み”でも店頭展開すると、本当に絵本売り場みたいになった。

「QUONテリーヌ」3枚セット
「QUONテリーヌ」を3枚セットにして、絵本のようにタイトルをつけた商品がヒット(写真:『温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来』)
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT