損保大手4社「覆面座談会」で見えた残酷な実態 「不正請求は日常茶飯事」「在庫車を強制購入」

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ビッグモーター以外のディーラーでも修理費の不正請求は日常茶飯事(撮影:風間仁一郎)

Bさん 損サは目下、過去の(保険金請求)事案で怪しいものを引っ張り出して点検し、自動車の所有者に返金するといった手続きを進めています。

その中で最も注意を払っているのは、例えば修理費が6万円と言われて自動車保険を使ったものの、実はその修理費は3万円だったというようなケースです。

その場合、保険を使わないほうが、翌年の保険料が上がらなくて済み、経済的です。しかし、BMに修理費6万円と言われ、しぶしぶ保険を使った結果、翌年の保険料が上がってしまったというのが、今回の事案でいちばん被害を受けている人たちといえます。

故障の不正請求を見抜くのは難しい

Cさん 修理をめぐって損保ジャパンが「完全査定レス」という仕組みを導入していたことには驚いた。アジャスターが細かくチェックしなくても保険金を支払いますなんて、そんなどんぶり勘定が本当にまかり通るのか。保険会社として、なんて危ないことをしているんだと思いました。

損保ジャパンには、故障に伴う自動車の修理費を最大100万円まで補償する商品があるそうですが、故障の不正請求を見抜くのは、事故の不正請求を見抜くことより何倍も難しい。その故障が経年劣化によるものなのか、故意によるものなのか、本当に見分けがつきにくい。モラルリスクが高すぎて、うちは故障については最大10万円までの補償が精いっぱいです。

Dさん 入庫件数を稼ぐために、BMへのDRSで故障補償をうまく利用していたという話を、社内で聞いたことがあります。入庫件数に応じて、各損保に自賠(自動車損害賠償責任保険)が割り振られるので、損保側も件数を稼ぐことに必死なわけです。

[完全査定レス]損保社員の立ち会いなどによる損害査定を省略して、保険金を支払う仕組み。

[アジャスター]損害査定業務を専門とする損保の社員。

[モラルリスク]契約者や保険金受取人が故意に事故を起こすなどして保険金を不正請求するリスク。

[DRS]損保が自動車事故を起こした契約者に、修理のための指定・提携工場を紹介すること。

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