「そんなことないですよ! もっと経験をお話しされたらいいのに」と言ったら、彼女は、「時代が違うわよ」と笑って「今の子は時間がないとか育児と仕事は両立できないとか言うけれど、ネイルしてメイクして髪もきちんとして、きれいにする時間は十分にあるのに…と思ってしまう。私はなりふり構わず走り回って、なんとかやってきたタイプだから、憧れの対象になんかならないでしょう。それに、そんなに美容を気にする暇があるなら両立できる、とか彼女たちに言ってしまって嫌われちゃいそう」と言ったんです。
私は自分のフレンチネイルにした爪を隠したいような気持ちになりました。そして、どんなに達観したように見える人だって、「今の人たちは恵まれている」「甘えている」という気持ちがどこかにあるものなんだな、とかえって親近感を覚えました。
また、別の話になりますが、私には、憧れていて大好きな、ちょっと年の離れた女性の先輩がいました。彼女にも可愛がってもらって、よく食事に付き合ってもらったものです。7~8年前だったかと思いますが、その夜も一緒にワインを飲んで、色々な話をしていました。
その時、私は2人目の子どもを流産して、不妊治療をしている頃。会社に理解がないことや自分の精神的なしんどさを、涙ぐみそうになりながら聞いてもらっていました。
「あなたは欲ばりすぎよ」
そうしたら、彼女が突然、「ひとり子どもがいれば充分じゃない!」と強い口調で言って、うつむきながら「欲張りすぎだわよ」とぽつりと言ったのです。
私はびっくりして言葉を失いました。大好きな先輩、いつも私の気持ちをわかってくれて、優しく厳しく応援してくれる先輩が、なんでこんな言い方をするのだろう……。
黙ってお酒を飲みながら、彼女にはお子さんがいないということに改めて気づかされていました。きっと私には言わないだけで、たくさんの努力をして苦しんで、そして今の生活をしている。私は先輩と後輩という立場に甘えて、彼女の気持ちに思いをはせることができませんでした。多分、無神経な私に、「これ以上聞いていたら、感情が溢れるからやめて!」と警告してくれたのでしょう。
そのことにまで思い至ったのは帰宅するタクシーの中で、その瞬間は、「そうだとしても、自分の苦しさを私の苦しさと比較したりかぶせたりするなんて、意外と大人げないな」だなんて思って、少しカチンときていたのです。なんて自分勝手な、思いやりのない後輩だったんでしょう!
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