学生に「AIを積極的に使おう」と促す切実な理由 9割の学生がChatGPTを使っていなかった

拡大
縮小

いずれにしても、アイディアさえ発想できれば、あとはたちどころに作品ができあがります。このようにアイディアがすぐ形になる状況を、私はキャッチコピー的に「アイディア即プロダクト」と表現しています。

「アイディア即プロダクト」の経済

このアイディア即プロダクトが、経済に及ぼす影響は計り知れないものがあります。これまでも、電子書籍や画像、ソフトウェアなどのデジタル財はコピーにほぼコストがかかりませんでした。

このことを、経済学の用語では「限界費用ゼロ」と言います。「限界」というのは追加的という意味で、「限界費用」は追加的なコストということです。たとえば、自動車であれば1台作ったあと、2台目、3台目を追加して作るのにもコストがかかるため、限界費用はゼロではありません。それに対して、電子書籍は1冊作ったあと、2冊目、3冊目を追加して作る場合でもただコピーするだけです。そのため、限界費用がゼロになります。

限界費用に対して、生産量に関係なくかかるコストは「固定費用」と言います。ここでは、最初にかかるコストというぐらいにとらえておけばいいと思います。電子書籍であっても、作家に執筆依頼をすれば報酬の支払いが発生するため、固定費用がかかります。

ところが、アイディア即プロダクトの経済というのは、限界費用ばかりでなく固定費用もゼロに近くなります。なぜなら、作家に執筆を依頼する必要もなく、アイディアさえあればすぐ作品ができるからです。コストというと、お金が発生するものとしてとらえる人が多いとは思います。

ですが、労力も一種のコストであるため、費用ゼロは労力ゼロと置き換えてもらってもいいでしょう。今のところ、AIに生成させたいくつもの作品を人間が吟味して、試行錯誤を繰り返す必要があるため、労力が完全にゼロというわけではありません。

それでも、プロンプト・クリエイターの方も徐々に手慣れてきて素早く作れるようになり、AIの今後の進歩によって、ますます簡単に作品を生み出せるようになるはずです。したがって、究極的には「アイディア即プロダクトの経済=費用ゼロの経済」となるわけです。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【資生堂の研究者】ファンデーションの研究開発の現場に密着
【資生堂の研究者】ファンデーションの研究開発の現場に密着
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT