学生に「AIを積極的に使おう」と促す切実な理由 9割の学生がChatGPTを使っていなかった
ただし、費用がゼロに近くても、価格がゼロになるとは限りません。これからさらに、AIの生み出した画像が桁違いに増えてくれば、単に見栄えのよい画像を作ったというだけでは、売り物にならなくなるはずです。それでも、アイディアが秀でていたり、生成AIの生み出した作品を取捨選択する際の審美眼が優れていたりすれば、有料で売ることも可能でしょう。
クリエイターはますます食っていけなくなる
それだけ簡単に作品が作れるようになれば、誰もがクリエイターになれると言っても過言ではありません。私は子どもの頃、漫画家になりたかったのですが、友だちから「画伯」とからかわれるくらいに絵が下手だったので、早々に断念しました。その後高校生の頃は、作曲家になりたいと思っていたのですが、音感がなさすぎてそちらの夢も諦めました。いまなら私は、漫画家にも作曲家にもなることができます。
実際、『サイバーパンク桃太郎』(Rootport、新潮社、2023年)のように、AIだけの絵で作られた漫画がすでに存在しています。あるいは、「Soundraw(サウンドロー)」のような音楽生成AIを用いると、数分に1曲のペースで音楽を作り出すことができます。絵が苦手でも、音楽的才能に恵まれていなくても、誰もがクリエイターになり得る時代が到来したのです。
経済学者の森永卓郎氏の言葉を借りて「1億総アーティスト時代」と言うこともできます。本当に国民のほぼ全員がアーティストのようになるかどうかはわかりませんが、個人がネットなどを通じて創作物を販売する「クリエイター・エコノミー」が急速に拡大するのは間違いないでしょう。
そしてそれ以上に、AIに作らせてみたものの、特に売りに出されることもない創作物が増大すると思われます。なにしろ、AIはものの数秒で画像を生成し、数分で音楽を完成させることができるので、その分だけむやみやたらと作られ、売り物にならないような創作物がネットにあふれかえるようになるわけです。
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