学生に「AIを積極的に使おう」と促す切実な理由 9割の学生がChatGPTを使っていなかった

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それが問題なのは、せっかく絵画やデザイン、作曲などの技能を身につけても、稼ぐことが難しくなるということです。今でも、クリエイターは一握りのスーパースターがいる一方で、その仕事だけでは生計が成り立たない人たちがたくさんいる職業です。ところが今後は、専門的な職業としてますます成り立ちにくくなるでしょう。

「1億総アーティスト時代」をあなたはどう生きる?

というのも、今ですらAIの生み出す画像や音楽はレベルが高いうえに、今後さらなるレベルアップが図られることが予想されるからです。そのため、AIが乱造する作品にすら、並みのクリエイターでは太刀打ちできなくなるでしょう。

さらに、人々はAIの生み出した無料の作品を消費することで満足してしまい、AIの作品よりも優れた人間の作品があったとしても、わざわざお金を出さなくなるかもしれません。

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2023年6月時点でも、「美術家・デザイナー」の有効求人倍率は0.17倍ほどで、5人に1人くらいしか職を得られない狭き門ですが、この倍率は今後ますます低くなるはずです。そうすると、確固たる作家性のある一流のクリエイターしか、本業で食べていけなくなるでしょう。

中国のゲーム業界ではすでに、画像生成AIによってイラストレーターの仕事が奪われています。これまで1週間かけて人が書いていたイラストを、AIならば数秒で生成してしまうからです。代わりに人間のイラストレーターは、AIが作った画像の微修正を担当させられ、仕事量も報酬も激減しています。

アメリカでは、コピーライターやカウンセラーが生成AIによって職を失い始めています。ChatGPTを使った映画の脚本作りも試みられており、ハリウッドでは脚本家などによる大規模ストライキが起きていました。これから多くの職業で雇用が脅かされるようになるでしょう。

井上 智洋 駒澤大学経済学部准教授

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いのうえ ともひろ / Tomohiro Inoue

駒澤大学経済学部准教授、早稲田大学非常勤講師、慶應義塾大学SFC研究所上席研究員、総務省AIネットワーク化検討会議構成員。博士(経済学)。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2011年に早稲田大学大学院経済学研究科で博士号を取得。早稲田大学政治経済学部助教、駒澤大学経済学部講師を経て、2017年より同大学准教授。専門はマクロ経済学。最近は人工知能が経済に与える影響について論じることが多い。AI社会論研究会共同発起人。著書に『新しいJavaの教科書』『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』などがある。

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