能登で活躍「トイレトレーラー」で見た深刻な現場 上水道が止まり状況は最悪、災害関連死を防げ

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「災害関連死を減らしたい」という思いから始まった災害派遣トイレネットワークプロジェクト。2016年4月の熊本地震の場合、273人の死者のうち223人が災害関連死で、地震そのものによる死者数50人の4.46倍に上った。石川さんは「このままでは死者数だけでなく、災害関連死の数も熊本地震のケースを超え、死者数の十何倍にまでなってしまうかもしれない」と危機感を募らせる。

8日、被災地は雪に覆われ、凍るような寒さに包まれた。「これまでの復旧復興とは違ったアイデアや知恵、創造力が必要になっている」。石川さんは声を絞り出した。

災害派遣トイレネットワーク参加の自治体が現在保有するトイレトレーラーは20台。目標は「全国に1741ある自治体の数」(石川さん)という。

富山県魚津市と福島県棚倉町(たなぐらまち)には、今年3月にトイレトレーラーが納車される。費用はそれぞれ約2600万円かかるが、その約3分の2は、国の緊急防災・減災事業債という仕組みを使って起債し、後に地方交付税として算入されるので、実質3分の1が市町の負担となる。

といっても、市町にとって約800万円の支出は痛い。そこで、両市町はクラウドファンディングの仕組みを使い、今月末まで寄付を呼び掛けている。お金を出してくれた団体や人の名前が車体後部に並ぶ。

とてもひとごととは思えない

2011年3月の東日本大震災の際、棚倉町は東京電力福島第一原発に近い海沿いの地域から避難してきた住民を受け入れた。避難所となった体育館ではトイレ不足が問題になった。今回のトイレトレーラーの導入は、すでにトイレトレーラーを導入している自治体の長から話を聞いた湯座一平町長の強い思いで決めたという。

棚倉町住民課の緑川好浩さんは、「元日の緊急地震速報、大津波警報を聞いた時にはぞっとしました。13年前の東日本大震災級の災害が石川県に降りかかった。とてもひとごととは思えない。大変な状況とは思いますが、助け合いをお互いできれば」「支援の輪を広げていきたい。1台でも多く、ほかの自治体でも導入していただければと思います」と話している。

千葉県君津市のトイレトレーラーの車体後部には、導入費用を賄うためのクラウドファンディングに応じた企業、団体、個人の名前が並ぶ(撮影:河野博子)
河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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