家族のなかに介護が必要な人が出てきたとき、その介護で中心的な役割を担うのは、多くの場合、家族の誰かになります。
介護というと、往々にして病気になった人(介護を受ける側)に目が行きがちですが、それと同じぐらい“介護する側”である介護者が、心身ともに健康である状態でいることが大切だと思っています。
なぜなら、介護者の最も大切な役割の1つに、状況を俯瞰して正確に捉え、困ったことがあれば誰かに相談することがあるためです。困っている現状があるなら、「困っている」ときちんと認識したうえで、誰かに相談するのがとても大切です。
介護者は「司令塔」の視点も大切
介護者が必ずしも自分の手で直接的に介護することがすべてではありません。たとえ自分が介護にあまり時間を割けなかったとしても、司令塔的に物事を判断していくことが必要です。状況を踏まえて、落ち着いた判断ができれば、ほかの人の手や介護サービスを頼ることもできます。
まずは状況を正確に捉え、足りていない部分があれば、そのための策を考えて判断していく。これが主たる介護者の、とても大切な役割です。
こうした役割をまっとうするためには、介護する側が、介護を無理なく続けられる範囲を知ることが必要です。例えばA子さんのように、近くに住む両親の生活をサポートしようとするのはもちろん良いのですが、全部を抱え込もうとするのではなく、どこかで優先順位をつけて判断していかないと、パンクしてしまいます。
実際、A子さんは「自宅にいたい」という母親の気持ちを尊重するあまり、自分がやるべきこと、あるいは外部に頼ったほうが良いことの優先順位をつけられないまま、両親のサポートと子育ての板挟みになっており、「どうしたらいいのかわからない」とパニック状態にありました。
「やってあげたい」という気持ちは大切ですが、体は1つしかないのですから、すべてに100%の力で向き合うのは無理な話です。そこは冷静に判断し、自分の中で折り合いをつけるのも、介護者の大事な役割であり、介護を受ける側にとっても大切なことだと思います。
では、A子さんのケースの場合、どう動くべきでしょうか。母親の希望を踏まえ、ひとまず在宅での療養生活を続ける前提で考えてみます。
まずやるべきは、一刻も早く途絶えていた父親の通院を再開させて、落ち着いた状態を取り戻せるように動くことです。
主な介護者である父親が不安定な影響で、A子さんの不安も増幅し、父親も落ち着かない状態が続いています。自分のため、そして家族のためにも、父親に通院が必要だと伝え、病院に連れて行きましょう。
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