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農作物をライブコマースで販売、都市部との格差は気にせず、ハイテク中国の「裏側」で暮らす農村10億人の姿

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ハイテク中国の「裏側」の農村では現在も約10憶人が暮らしている(写真:Lam Yik Fei/The New York Times)

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AIや人型ロボット、プラットフォームビジネスなど次々とデジタル技術が社会に実装され、ハイテク化のスピードが著しい中国。ただ、目覚ましく発展しているのは都市部だ。
全人口14億人のうち都市部の人口は約4億人。残りの約10億人は農村で暮らしている。そこで暮らす人々の姿が、われわれには見えているか。長年、中国の農村調査を手がけ、『中国農村の現在――「14億分の10億」のリアル』や『中国農村曼陀羅――円環する郷土と暮らし』などの著書をもつ田原史起・東京大学教授に聞いた。

――上海や深圳など中国の都市部では著しい発展が目立ちますが、大半を占める農村部の現状はどうなっているのでしょうか。

農村部でも都市化と人口集中が進んでいる。中国政府は2014年に国家新型都市化計画を公表し、農村部の都市化を目指してきた。その結果、(行政区分で)省、市の下にある人口50万人規模の県の中心部、県城に人口が集中している。

私が過去に実地で調査してきた2つの地域の都市化率を例に挙げれば、10年に東部のある県が約40%、西部のある県が11%だったところ、20年には前者が60%弱、後者が32%になっていた。中国の多くの農村部で同じような変化が起きている。

耐久消費財の普及率を見ると、24年、スマートフォンは100世帯当たりおよそ300台だった。農村もIT化が進んでいる。通信インフラも整備され、ほぼすべての人がウィーチャット(メッセンジャーアプリ)を使っているほか、村と村をつなぐ道路も舗装され、外部とのアクセス環境が向上している。

普段は村に住まず、県城で暮らしている人も増えてきた。例えば村のグループチャットで「会議をやる」と呼びかけられると、県城で暮らす人々が村に集まるという具合だ。村を出て県城で暮らしていても、村との関係が切れるわけではない。県城で都市の暮らしをしながら村とつながっている。

農村と県城を行ったり来たり

――中国の農民というと、都市部に出稼ぎに行くイメージがあります。

現金収入が必要なので、大都市に出稼ぎに行く人たちは多い。農村から出稼ぎに行く農民工はもともと大都市で収入を得ながら、必要に応じて村に戻り農作業の手伝いをするという、行ったり来たりの生活をしながらお金を貯め、県城のマンションを買うケースが多かった。

[著者プロフィール]田原史起(たはら・ふみき)/東京大学大学院総合文化研究科教授。1967年、広島県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。専攻は農村社会学、中国地域研究。『草の根の中国─村落ガバナンスと資源循環』(東京大学出版会)でアジア・太平洋賞大賞を受賞。(撮影:梅谷秀司)

農村と都市部を行ったり来たりする生活は現代でも多く見られる。県城でマンションを購入したら、子どもを県城の学校に通わせて母親がそれに付き添い、父親は引き続き現金収入が必要なので大都市で出稼ぎを続ける。

祖父母世代は農村と県城の間を行き来する。農村の小さな畑で作物を作りながら、子や孫のケアが必要なときは県城に赴く。時には食料の足しとして県城の孫たちの元へ作物を持っていく。

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