避難者で注意すべきことは、これだけではない。肺炎対策、特に誤嚥性肺炎対策も重要だ。これについても、わが国を中心に研究が進んでいる。
2017年10月、福島県の相馬中央病院の森田知宏医師らの研究チームが、イギリスの『Journal of Epidemiology and Community Health』誌に発表した研究がある。彼らは東日本大震災で被害を受けた福島県相馬市と南相馬市の人口動態統計と住民登録を用いて、震災前後の死亡率を推定した。
その結果、2011年3月の死亡率は、震災前の4年間の同月と比較し、男性で2.64倍、女性で2.46倍上昇していた。この分析では、津波による死亡や建物の倒壊による死亡など、地震による直接死を除外している。
災害時は誤嚥性肺炎にも注意が必要
なぜ、この時期に多くの人が亡くなっていたのだろうか。この論文によれば、死因の多くが誤嚥性肺炎であったという。
実は、まったく同じ現象が熊本地震でも確認されている。2016年5月11日、熊本赤十字病院の医師らは、震災後、肺炎患者の入院が前年比で約2倍に増えたことを発表している。
震災後、高齢者の誤嚥性肺炎が増えるのは、口腔ケアが不十分になるからだ。高齢者は無意識のうちに食物残渣(食べかす)を誤嚥し、ときに肺炎を起こすが、これは歯磨きなどの口腔ケア(下のイラスト参照)をすることで予防できる。
震災後は介護者や看護師の手が回らず、肺炎が増加したと考えられる。それなら、口腔ケアの優先順位を上げればいい。
どうすれば、大災害から貴重な命を救えるか。社会で過去の経験を共有し、虚心坦懐に学ぶしかない。東日本大震災や熊本大震災で起こったことが能登半島地震でも起こらないとは限らない。本稿がお役に立てれば幸いである。
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