災害関連死の原因で注意「血栓」「誤嚥」を防ぐには 怖いのはエコノミークラス症候群だけじゃない

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災害関連で起こる健康被害で知られているのは、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)、いわゆるエコノミークラス症候群だろう。これは長時間、同じ姿勢を取り続けていることで、主に下肢の静脈の血流が停滞し、血栓(血の固まり)が生じる状態をいう。

最初の報告は1954年。アメリカのピーター・ベント・ブリガム病院のジョン・ホーマンズ医師が、『ニューイングランド医学誌』に発表した。

第2次世界大戦後、戦勝国を中心に民間航空が大きく発展した。1950年代にはエコノミークラスが導入され、富裕層以外も海外旅行を享受できるようになった。

エコノミークラスの乗客は、長時間にわたり狭い座席で同じ姿勢を強いられる。当時、エコノミークラスの乗客に深部静脈血栓症がよく起こったため、エコノミークラス症候群と呼ばれるようになった。

深部静脈血栓症は深刻な疾患だ。なぜなら血流に乗った血栓が肺の血管を詰まらせるからだ。これを肺塞栓と呼ぶ。肺塞栓では肺の一部に血液が届かなくなり、肺組織が壊死(えし)すると同時に、残された健常な肺組織に過剰な血液が入り込む結果、呼吸や血流が悪化して、 死に至ることさえある。

エコノミークラス症候群の予防法

健康な乗客でも突然死の原因となることから、世界中で対処法について研究が進んだ。現在、標準的な予防策とされているのは、定期的に足を動かすこと、水分補給、圧迫(弾性)ストッキングの着用などだ。

さらに、家族歴(家族に深部静脈血栓症の人がいるか)などの遺伝的な素因がある人や肥満の人、喫煙者、がん患者、経口避妊薬(ピル)服用者といった深部静脈血栓症になりやすい人たちには、血液を固まりにくくする低分子ヘパリンなどの抗凝固剤やアスピリンなどの血小板凝集抑制剤が用いられることもある。ただ、このような薬は逆に出血のリスクが生じるため、使用にあたっては注意が必要だ。

避難所や車中などで長時間にわたって同じ姿勢を取らざるを得ない被災者も、この病気に気を付けなければならない。特に、災害直後は水分の補給が不十分なことが多く、脱水になりやすいため、深部静脈血栓症のリスクが高まる。

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