2024年の日本株は「方向感が出にくい年」になる 「甲辰(きのえたつ)」の年で考える日経平均

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さて、2024年前半の日米株式市場の見通しは、ひとことで言えばアメリカの金融政策の行方にかかっている。米国株は、2023年10月末を底に年初来高値を更新して急騰を続けている。私はFRB(連邦準備制度理事会)が6月から年内4回の利下げをすることを見込んでいる。だが、すでに市場はFRBが3月から年内6回の利下げをすることを見込んでおり、さらに楽観的だ。いずれにしても、市場も利下げの開始までは堅調に推移する可能性が高い。

日本株、特に日経平均株価は、米国株の主要指標(NASDAQなど)に連動しやすいが、やはり日銀がいつマイナス金利を解除(1月・3月・4月・それ以降か)して正常化するのかも注視したい。

日銀が決め打ちをしていないのだから、分布で考えるべきだが、今のところ市場では4月の予想が最も多くなっている。もし、4月など年前半に日銀が動けば、そのタイミングで株価はいったんピークをつけるかもしれない。

もし株価が振れても耐えられる資産運用を

ただ、もし上昇したとしても、この後が難しいのだ。前述のとおり、2024年後半の日米株式の見通しを立てるうえで、最大のリスクは「米国大統領選挙に絡んだ政治リスク」だ。

11月5日に大統領選挙を控える与党・民主党のジョー・バイデン大統領にとっては、この選挙はどうしても負けられないはずだ。バイデン大統領は、勝利確実なラインまで支持率を上げたいと考えているだろう。だが、野党・共和党のトランプ前大統領(現状の有力候補だが未定)との戦いを制することができるのか、現時点ではどうなるかわからない。共和党政権になれば、金融政策も大きく変わるかもしれないのだ。

このため現時点では、2024年の日本株(日経平均株価)は、3万1000円から3万5000円までのボックス圏での値動きを想定する。

2024年は「たとえ株価が振れてもじっと耐えられる資産運用」が大事になると思っている。また押し目買いや吹き値売りがうまくできるかどうかで、運用の上手・下手がはっきりわかり、プロでも大きく差がつく1年になるだろう。基本は資産保全(本当の分散投資)に徹するべきだと思う。お金も気持ちも余裕をもって、楽しんでマーケットと向き合ってほしい。

(本記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経ニュースプラス9」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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