紫式部の才能を開かせた"女"という「生きづらさ」 「源氏物語」を描き続けた原動力になったもの

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紫式部が大長編を書き上げる「原動力」になったものとは?(イラスト:ならネコ/PIXTA)

テレビを手放してから10年ほどになる。

映画やドラマはストリーミングサービスを利用して好きなときに好きなだけ観られるし、インターネットさえあればニュースもいち早く情報を入手できるし、置き場所に悩まなくて済む。番組制作に関わっている方々に申し訳ないと思いつつ、芸能界のゴシップに疎い私は、テレビがなくても快適に過ごせている。

だがしかし。1月よりスタートするNHK大河ドラマは紫式部にまつわるものだと聞いて以来、そわそわして落ち着かない。大学生のときから『紫式部日記』や『源氏物語』を耽読しているだけに、興味津々なわけである。

ゴールデンタイムに君臨する大河ドラマを観るのは、昭和時代から続く日本人の習慣の1つだ。そこに古典ネタ、しかもよりによって王朝文学の大御所ともなると、いやが応でも期待が高まる。ということで、テレビを購入するかどうかは別の機会に検討するとして、まずは謎多き天才作家、紫式部について予習しておきたい。

悲しみを紛らわせるための物語だった

中級貴族・藤原為時の娘として生まれて、母親とは早くに死に別れる。結婚は遅く、子供に恵まれるものの、わずか3年で夫は疫病にかかって死去。後ろ盾となる存在を亡くしてお先真っ暗な紫式部は、「ものがたり」に慰めを求めたのだ。

ところが、悲しみを紛らわせるために書き始めた物語がたちまち話題を呼び、当時の最高権力者・藤原道長の目に留まったのをきっかけに、紫式部は中宮彰子の女房として後宮に迎え入れられる。有閑未亡人からバリキャリへと変身した彼女は、宮仕えしながら『源氏物語』を綴り続けて、後世に亘って読み継がれる傑作に仕上げていく。

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