紫式部の才能を開かせた"女"という「生きづらさ」 「源氏物語」を描き続けた原動力になったもの
もちろん本人はガールパワーに目覚めていたわけでもなければ、ガラスの天井を破る気も毛頭なかったと思われる。むしろ、自分の運命を呪った可能性は十分にあるが、もしも彼女が女性に生まれてこなかったら、『源氏物語』も存在しなかったことだろう。
とはいえ物語に多少救われていても、心のモヤモヤが残る……。作者が感じたその独特な「生きづらさ」こそ、『源氏物語』の根底にあって、ストーリーを発展させる原動力になっているように思える。
異彩を放つ、素敵な登場人物たち
だからなのか、そこには実にさまざまな女性たちの人生が見事に描かれており、主人公の光源氏は彼女らを際立たせるための役回りを担うことが多い。泣き崩れる脆い姫君もいれば、ずる賢い女房もいるし、嫉妬に怒り狂う妃もいて、養ってもらえればラッキーと喜ぶ貴婦人もいる。
桐壺の更衣、葵の上、紫の上、藤壺の宮、末摘花、六条御息所、夕顔、浮舟……『源氏物語』には異彩を放つ、素敵な登場人物がたくさんいて、当時の女性たちが、男性優位の社会のなかでいかに生きたか、愛と悲しみの人生をどのように送ったかを教えてくれている。しかも、その内容もまた、現代に通ずるような豊かな面白さを持っているではないか!
紫式部の想像によって生まれた、その「源氏の女たち」から今でこそ学べることがいっぱいあるはずだ。やはり一条天皇が仰った通り、彼女は唯一無二の天才、「まことに才あるべし」。
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