紫式部の才能を開かせた"女"という「生きづらさ」 「源氏物語」を描き続けた原動力になったもの

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わかっているのは概ねこれくらいだが、実はそうした断片的な情報さえも信ぴょう性に乏しい。平安時代から伝わってきている資料はそもそも少なく、中宮や妃でもない限り、女性に関して記録する習慣がなかったからだ。

実在したこと以外はベールに包まれたまま

藤原実資による『小右記』のなかに、紫式部とおぼしき人物が「藤原為時の女(むすめ)」として登場しているため、実在は一応裏付けが取れている。ただし、それ以外のことは謎のベールに包まれたままだ。

本名は? 本当に1人で『源氏物語』を書き上げたのか? 藤原道長の愛人だったのか? 後宮を去ってからどう生きたのか? そんなの、知る由もない。

どこまで信じるか問題は依然として残るとはいえ、紫式部の性格や生い立ちなどは、ご自身が書いた(とされる……)『紫式部日記』に記されているので、その辺りから予習するのが手っ取り早い。

華やかな儀式の描写を挟みつつ、作者が宮仕えの大変さについて打ち明けていることも相まって、日記のページからは人間味溢れる姿が浮かび上がる。人間関係に悩んだり、周りの女性陣と馬が合わなかったり、急激に老いていく自分を感じたり……。ページをめくりながら、うん、うん、わかる、わかるよー、という声が漏れそうだ。

日常の大変さが滲み出ているエピソードの中で、紫式部の漢文知識が豊富過ぎて、周りの女房の批判を呼んだという話はわりと有名だ。

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