スタバ「巨大企業帝国」がはらんできた数々の矛盾 矛盾に満ちた経営が、独特な共同体を作り上げた

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ちょっと空想が過ぎたかもしれないので、補助線を引いておこう。哲学者のアントニオ・ネグリとマイケル・ハートは共著書である『帝国』という書籍の中で次のような議論を展開した。

ソ連崩壊以後、グローバル資本主義が世界を覆い、これまでの国家を超える存在として、グローバルな企業が世界的に覇権を握っていくのではないか。なるほど、スターバックスもまた、世界中に存在する巨大企業として、国家を超える存在となっているのかもしれない。

そういえばこれに関連して思い出したのだが、スタバの実質的な創業者であるハワード・シュルツは、かつてアメリカ大統領選挙への立候補を考えていたらしい。

結局色々な要因が重なってシュルツが立候補することはなかったが、シュルツが「国家」というものに大きな興味を持っていることがわかるだろう。シュルツはスタバという国家の大統領(それとも、建国者か)である。

さて、連載も終わりに近づいてきた。ここで最後に、スターバックスを今後語るときに有効な視座をいくつか出しておこう。

最後に私は「国家としてのスターバックス」という壮大なアイデアを提案したが、こうして考えたときに、興味深い比較の対象となるのが、ディズニーランドをはじめとするテーマパーク産業とスターバックスの比較である。

実はテーマパークもまた、一つの「国」を作ろうとしてきた歴史がある。特にディズニーランドは、その創設者であるウォルト・ディズニーが理想とする国を作ろうとしてきた歴史が色濃い。そういえばディズニーランドのチケットは「パスポート」というが、まさにそれはディズニーランドが一つの国であることを表しているようにも思える。

スタバを今後考えるために

また、雑誌『戦略経営者』の2000年9月号で「TDLとスターバックスに見る『顧客に惚れさせる』演出」という記事が掲載されている。その2つは、そこでしかできない「体験」を売っていることが共通点だと記事は書いている。

スタバとテーマパーク。この2つは、全く別物だから、ビジネス的な観点からいえば、それらを比較することはナンセンスだといえるだろう。しかし、顧客側に立ったときの視点からいえば、明らかにその2つは似ていて、比較するのに足るのではないか。

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