「定年後の人生」を左右する「50代で心掛ける事」 ハロワ通った宇宙飛行士が気づいた3つのこと
仕事一筋に生きてきて、家に居場所がなく、地域社会とのつながりもなく、同僚や部下とのコミュニケーションは以前よりも薄くなっており、仕事関係の人脈も定年などによって組織を離れれば失われてしまうため、どこにも帰属意識を持つことができない。
50代の人たちは幸福から遠い場所にいる
「将来はあらゆる欲求が満たされ、悠々自適の生活を送れるはずだ」と信じ、組織の中で一生懸命働いてきたのに、いざ年齢を重ね、気力や体力が衰えてきたときに、「若いころ思い描いていた、安泰な生活にたどり着けない」という現実に直面させられる50代の人たちは、幸福から遠い場所にいるのではないかと、僕は思います。
では、どうすれば50代以降、幸せな人生を過ごせるのか。
そのための心構えは3つあります。
1.組織とのつながりを少しずつ弱めていく
僕は2022年6月1日、57歳のときに、26年間近く宇宙飛行士として所属していたJAXAを退職しました。
定年を待たずに退職することを決めたのは、もちろん「後進に道を譲りたい」という気持ちもありましたが、
「JAXAにいて次の飛行ができる可能性は限りなく0に近い」
「まだ自分の中に燃料が残っているうちに、民間や世界など、もっと広い世界に出て行って、もう一度もまれたほうがいい」
と思ったからでもありました。
人間の気力や体力は、年齢を重ねるにつれ、どうしても失われていきます。56歳から60歳までの5年間と、61歳から65歳までの5年間では、同じ時間であっても、できることは大きく異なります。
同じ職場の何歳か上の先輩方の中には、定年を迎えると同時にそれまでのキャリアや人間関係など、組織のさまざまなつながりを一気に切られ、苦労している人もいました。
その様子を目の当たりにして、そして何よりも、自分自身が40代後半から50代後半にかけて苦しんだ経験を踏まえて、「60歳を迎える前に、自分で組織のつながりを断ち切り、自分一人でアイデンティティを築けるようにしておかないと、自分が宙ぶらりんになってしまう」という危機感を抱いたのです。
だからといってみなさんに、「今すぐ退職すべきだ」と言っているのではありません。
ただ、慣れた環境で働けることに安心しきっていると、やがて組織とのつながりが切られることに気づけずに、深い苦しみや悩みに直面することになります。
「このまま同じ場所にいてはいけない」「今のうちに、自分の足で歩き出さなければいけない」という気持ちで、定年後も生きていくための準備をしておくのです。
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