もちろん事前資料の作成などはなしです。実際のプロトタイプに勝る説明資料はなかなかありません。このようなセッションをやってみると、ユーザーからのフィードバックの確からしさだけでなく、意思決定やすり合わせのスピードも格段に上がることを実感できます。効果は実証済みです。
IDEOでは過去に、実物大の車からホテルの部屋、飛行機の機内や空港、医療機器など、本当にさまざまなもののプロトタイプの力を目の当たりにしてきました。
プロトタイプを作って、それを見ながら皆で議論する──実行のハードルは低いですし、さほど苦労なくできるはずです。できるかどうかの議論に時間を使いすぎてしまうのは、失敗を恐れるからであり、また、行動することの楽しさを忘れてしまっているからでもあるでしょう。
会議室で「本当にできるのか」の議論が始まったら、すぐにそこを出て、できるかどうか、実際に試してみるのが一番です。
失敗しても「失敗の仕方」がうまくなる
問いかけからアイデアが出て、それをプロトタイプにしてみると、そこから生まれるものは、さらに良質な問いかけです。
そうして続けていくなかで、次第に実験の仕方も変わっていくかもしれません。
例えば飛行機の機内デザインだったら、発泡スチロールや木材を使うだけでなく、もう少し解像度を上げて実物に近づけ、本物の飛行機のシートを用意して機内スタッフにも参加してもらう。あるいはサービス部分を実験するために空港でポップアップショップを出してみる、といった試みもできるかもしれません。
これはすなわち実験上手になっていくということです。「失敗を恐れず」という言葉がありますが、本質的には「上手に失敗できるようになる」ということなのです。問いかけるとはそういうことです。
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