書店のドン「紀伊國屋」がTSUTAYAと組んだ裏側 紀伊國屋会長に合弁会社設立の狙いを直撃

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――仕入れ力の最大化という意味では、出資社以外の書店をより多く巻き込む必要もあります。

「どこまで粗利率が上昇するのか」と懐疑的になっている人もいるし、(日販の競合である)トーハン系列の書店は、そもそも参加が難しいだろう。こういった部分は仕方ないんじゃないの。

ただ書店はね、売上高の上昇や返品率の抑制によって、(現状は2割程度の)粗利率3割が見えてきたら雪崩を打ちますよ。実績が出たら、必ずブックセラーズから発表しますから。そうすれば、「じゃあ、俺のところも」ということになるだろう。

11月に開かれたブックセラーズ&カンパニーの説明会の様子
ブックセラーズの社長を務めるのは、紀伊國屋の宮城剛高経営戦略室長。説明会では、粗利率3割の実現プランを説明した(撮影:梅谷秀司)

――「業界大手のTSUTAYAと紀伊國屋による出店調整に巻き込まれ、不利益を被るのではないか」などと、他の書店からは難色を示す声も聞こえますが。

それは考えすぎじゃないかな。会社を一緒にしているわけじゃないから、ブックセラーズにそんなことはできないもん。

――より多くの書店から出資を募ったうえで、ブックセラーズを設立することは考えなかったのでしょうか。

将来はわからないけど、こういう話は多ければ多いほど難しくなるから。それよりも先に、同じ志を持っている会社で組んだ。ただ、門戸は開いていく。

CCCの増田さんに伝えたこと

――本をレンタルの集客装置と位置づけ、一気に業界首位へと駆け上がったCCCを、アレルギー的に嫌う書店は多いです。紀伊國屋の社内でも、協業に向けた議論が紛糾したのでは?

そんなことはないんだけどね。レンタルの売り場が少なくなる中で、その部分を喫茶店にしても、雑貨を売ってもいい。ただ、僕も増田さんに「もう少し本を売らなきゃ。本屋に徹しないとだめだよ」とは言った。

うちが本屋として売上高が伸びているのは、本に徹しているから。雑貨や喫茶店などにはあまり手を出していない。新宿の紀伊國屋も相当なお金をかけて大改築し、あれだけのビルをテナントに貸し出すわけでもなく、ちゃんと本屋にした。

「高井、どこかのブランドに貸して、家賃収入を得るほうがずっといいぞ」という人もいるが、本好きの社員が集まって、「どんなことがあっても、一番いい場所で本を売るんだ」「海外でも本屋をやっていくんだ」と。

お客さんもわかるんだよね。本屋に行っても(本屋として)面白くないからと、アマゾンで買ったり、しまいには本を読まなくなってしまう。

――今後、CCCとの協業を拡大していく考えはありますか。

まずはブックセラーズの成功を考えないといけないので、具体的には決まっていない。ただ、TSUTAYAの企画力は魅力的で、それを生かしてうちが海外に店を作っていくことは考えられる。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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