書店のドン「紀伊國屋」がTSUTAYAと組んだ裏側 紀伊國屋会長に合弁会社設立の狙いを直撃

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――2022年に講談社、小学館、集英社の出版大手3社が、業界外の丸紅を巻き込んで出版流通改革の合弁会社「パブテックス」を設立しました。ブックセラーズも、資金力や、違う分野でのノウハウを持つ外部企業を巻き込んだほうがよかったのでは。

うちとTSUTAYAは十分お金持ちだよ。うちは海外や外商のビジネスが非常に順調。TSUTAYAの財務も一時期よりは弱っているだろうけど、大丈夫だよ。

そこでほかの資本を入れると、ややこしいじゃない。資本力が大きいともなれば、結局傘下にとられちゃうよね。いやだよ。

紀伊國屋の高井昌史会長
高井昌史(たかい・まさし)/1947年東京都生まれ。1970年成蹊大学法学部卒、1971年紀伊國屋書店入社。各地の営業所長などを経て、1993年取締役。常務や専務を歴任し、2008年代表取締役社長、2015年から会長を兼務。2023年10月にブックセラーズ&カンパニー代表取締役会長。同年11月いっぱいで紀伊國屋書店の社長からは退任(撮影:梅谷秀司)

――出版業界には、出版社が決めた販売価格を書店が守らなくてはならない「再販売価格維持制度」が存在します。これにより、書店が価格決定権を握れないなど、つねに業界の主導権は出版社側にありました。

この業界は書店が非常に弱い立場で、出版社が強かったことは事実だし、今も強い。仲間だから言えるけど、あの4社(小学館、集英社、講談社、KADOKAWA)は強い。

大手4社も協力の意思を示している

――各種の販売施策と並行することで、出版社の収益も拡大できると掲げていますが、電子コミックやライツビジネスの成長が著しい大手出版社は乗ってくるでしょうか。

確かに4社は漫画やアニメ、キャラクタービジネス、それらの海外展開が非常に大きくなった。でも基本的に、ほかの3000社くらいの出版社にそれらはない。東洋経済も含め、5位以下(の出版社)って大変でしょう?

だからたくさんの出版社が、「ブックセラーズと一緒に改革しよう」と思ってくれている。すでに紀伊國屋と朝日新聞出版、TSUTAYAとスターツ出版など、モデルになるような収益向上の事例は出てきている。同じように変えていけばいいわけだ。「紀伊國屋の高井が言ってるから、嫌だとは言えない」という人もいるけどね。

――とはいえ、大手4社が発行する出版物の量は無視できません。

具体的な参加の形はこれから詰めることだが、例えば講談社の野間省伸社長には「協力するよ」と言われている。大手4社に関しては僕が挨拶に行き、4社すべてから協力の意思を示された。

僕が行けなかった出版社にも、CCCの髙橋社長や日販グループホールディングスの吉川英作社長など、出資する各社のトップが設立前から直接説明している。

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