高齢ドライバーの免許「強制取り上げ」はできる? 法的にそのようなことは可能か弁護士が解説
2022年5月に「運転技能検査」が導入されましたが、特定の違反(信号無視、速度超過など11種)をした75歳以上のドライバーだけを対象とするもので、運転技能検査を課されない高齢者も当然一定数いることになります。
全員の技能検査ができないことから運転技能低下の兆候として違反行為をとらえて検査を課すものですが、高齢ドライバーの運転技能をチェックする制度としては、明らかに不十分です。
たとえば、75歳を過ぎたら毎年免許の更新手続きをする、運転技能を確認するための試験も必ず課す、といったことが少なくとも必要なのではないでしょうか。その結果、水準に達しなければ、免許の更新は許可しないという形にしなければ、免許制度の実効性を確保できません。
免許制度は「政策の問題」
免許更新できないと自動車を運転できなくなるので、特に公共交通機関がない地域では病院や買い物にも行けなくなるという議論があります。
さまざまな解釈がありえるとは思いますが、免許の取得や保有に関しては憲法上の問題は生じないと考えます。自動車を運転することは憲法上の権利ではないからです。
特定の年齢層にだけ負担を課すことが平等原則(憲法14条)に反するのではないかということはあり得ますが、少なくとも高齢化に伴い認知機能などが衰えることは否定できませんから、年齢ごとに異なる扱いをすることには合理性があり、平等原則に反するとは言えません。
ただし、高齢者であるがゆえに求められる技能水準を上げるということになると、その取扱いには高齢であること以外の理由が見出せませんから、平等原則に反するおそれはあります。
いずれにしても、免許を保有することは憲法上の権利とまではいえず、どの程度の運動機能、認知機能を持つ人に免許を持つことを許可するかという政策の問題です。