高齢ドライバーの免許「強制取り上げ」はできる? 法的にそのようなことは可能か弁護士が解説

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

家族の「同意権」が適正に行使されるという担保もありませんし、単に最近の運転が危なっかしいからとかいうだけでは、主観的な評価にしかなりません。

制度設計上、免許を取り上げられた側に不服申立ての権利を認めることが不可欠になるでしょうから、家族が取り上げておしまいということにはなりません。

取り上げたことで家族間の関係がこじれ、紛争に発展する可能性もあります。家族が免許返納を助言していたにもかかわらず、本人がそれに従わなかった場合、強制返納制度があったとしても、それを実行できないことが少なくないと思われます。

逆に強制返納制度が導入された結果、「家族はなぜ免許の返納させなかったんだ」というように今以上にバッシングの的になりかねません。また、家族がいない高齢ドライバーについてはそもそも問題解決になりません。

以上のように、強制返納制度の導入は現実的ではないと思われます。新たな対策として実際に考えられる制度としては、家族の申告があれば、認知機能検査などを受けることを本人に義務付けることでしょうか。

現在の免許更新制度「甘いチェックで明らかに不十分」

むしろ問題として議論すべきは、現在の免許更新制度にあります。

75歳になる6カ月前までの更新を必要としますが、更新は3年に1度です。高齢者は日ごとに認知機能、運転機能が低下していくので、3年前の機能が維持されていない方が普通です。人によって差があるにしても、それは程度の差に過ぎません。

運転免許の実質的な意味は、自動車という危険物を扱う許可証です。したがって、どんなに運転技能があろうとも、違反行為に対しては免許の取消しや停止があり、運転技能がなければ、その性質上、許可を与えてはいけないということになります。

運転技能については、教習所の検定に合格すれば運転免許試験場の技能試験は免除されますが、実際には初心者や高齢者でなくとも不安に思う運転があることは否定できません。

免許を与える基準として運転技能のレベルをどこまで求めるかという問題ですが、現状は多少危うい運転をするようなレベルでも免許を保有できています。高いレベルの技能を求めてしまうと免許を取得できない層が出てきてしまいますが、そのような制度にはしていないということです。

逆にいえば、現状の緩い基準にさえ届かないほど技能が落ちている場合にまで免許を保有させておく合理的理由はなく、更新させてはならないことになります。しかし、高齢ドライバーの運転技能を確認する機会は限られています。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事