軽すぎる?池袋暴走事故「禁錮7年求刑」の妥当性 自動車による死傷事故の法的な考え方を解説

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2019年に池袋で暴走事故を起こした乗用車(写真:共同通信)

東京都豊島区にある池袋で2019(平成31)年4月19日、高齢者の運転する乗用車が暴走して交差点に進入し、歩行者・自転車らを次々にはね、計11人を死傷させ、そのうち母子2人が死亡し、9人が負傷したいわゆる「池袋暴走事故」で、運転手は、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)の罪で起訴され東京地裁で審理が続いている。

東京地方裁判所における刑事裁判で、検察官は「事故の原因は、被告人がブレーキとアクセルを踏み間違えたことだ」と主張し、被告人および弁護人は「車に電子系統の異常が起き、ブレーキが効かなくなった」として無罪を主張している。

検察官は、7月15日の公判で禁錮7年(法定刑の上限)を「求刑」した。判決は、9月2日に予定されている。

この事件は、事故直後から、母子2人が亡くなるという結果の悲惨さに加え、運転していた被告人が事故当時87歳という高齢で元通産省の公務員であったことからインターネットなどでは「上級国民」などと激しいバッシング、批判の対象となった。

大変不幸な事件であり、亡くなられた被害者2人のご遺族の心痛は察するにあまりある。亡くなった母子の夫が運転をした被告人に対して反省と厳罰を求めていることも置かれた立場に照らせば当然のことと思われる。

刑事司法制度に対する誤解も

しかし、巷の反応を見ていると事件当初から「こんなに重大な事件なのに運転手が逮捕されないのはおかしい!元通産省の官僚だったから不当に優遇されているのではないか!」といったバッシングに始まり、先日の公判における検察官の論告を取り上げて「検察官の求刑禁固7年は軽すぎる!」などといった批判が散見される。

これらの批判は、日々刑事裁判に関わっている法律の専門家からみると刑事司法制度に対する誤解に基づいているのではないかと思うものも多数みられる。そこで、自動車による死傷事故が発生した場合の法律、制度の考え方について、あらためて基本から解説してみたい。

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