父の秀忠の場合は、家康の側近を排除し、自分のお気に入りを新たな側近にした。だが、家光は、幼少期から自分の守役を務めた酒井忠世や土井利勝らをすぐに外さなかった。
その代わりに、自分のお気に入りを「六人衆」として政務に取り入れている。松平信綱、堀田正盛、阿部正秋、阿部重次、三浦正次、太田資宗らのことである。
家光は六人衆について「少々御用の儀を取り合う者として起用した」(『江戸幕府日記』)として、年寄衆が持っていた権限を六人衆に移行させた。さらに、春日局の子である稲葉正勝や、実弟の保科正之らにも政治に参加させている。
将軍の独裁体制が機能しなくなる
そうして六人衆など子飼いの家臣に政権運営に慣れさせておいてから、家光は徐々にベテランを排除していこうとしたのである。
ところが、1年半ほど実施して、この政治機構の問題点が出てくる。トップ不在時にまるで機能しないのだ。実際に、トップの家光が健在なときこそうまく機能したが、家光は病気がちで、政務をまるで執れない時期が1年あまり続くこともあった。
そんなとき、将軍の独裁体制では何一つ物事が進まない。この失敗から、数名の老中により統括していく行政システムを、家光は構築していくことになる。
【参考文献】
大久保彦左衛門、小林賢章訳『現代語訳 三河物語』(ちくま学芸文庫)
大石学、小宮山敏和、野口朋隆、佐藤宏之編『家康公伝〈1〉~〈5〉現代語訳徳川実紀』(吉川弘文館)
宇野鎭夫訳『松平氏由緒書 : 松平太郎左衛門家口伝』(松平親氏公顕彰会)
平野明夫『三河 松平一族』(新人物往来社)
所理喜夫『徳川将軍権力の構造』(吉川弘文館)
本多隆成『定本 徳川家康』(吉川弘文館)
笠谷和比古『徳川家康 われ一人腹を切て、万民を助くべし』 (ミネルヴァ書房)
平山優『新説 家康と三方原合戦』 (NHK出版新書)
河合敦『徳川家康と9つの危機』 (PHP新書)
二木謙一『徳川家康』(ちくま新書)
日本史史料研究会監修、平野明夫編『家康研究の最前線』(歴史新書y)
菊地浩之『徳川家臣団の謎』(角川選書)
福田千鶴『徳川秀忠 江が支えた二代目将軍』(新人物往来社)
山本博文『徳川秀忠』(吉川弘文館)
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