45歳で逝った出版社社長の「死を噛みしめた言葉」 本の制作に生きた男が残した1200の投稿

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病状を明らかにすることに迷いはあったが、「この先の時間を分かち合う人たちには、知っていてほしい」という思いが募ったこと、そして、出版社の代表として最悪のケースに備えなければならない責任を感じていたことも決意を後押しした。記事の後半、夭折した歴史学者・保苅実さんに自分を重ね合わせることで、自らが理想とする生き様にも言及している。

<33歳の若さでがんで亡くなった保苅実は、死の直前に友人たちに宛てたメールで、以下のように書き残しています。
 「勇敢で冷静、そして美しくありたいと感じています」
 このことばがどこかに引っかかっていたのかもしれません。僕もステージ4の癌であることを知らされたときに、ともすれば取り乱しそうになる頭の片隅で、勇敢でありたいと考えました。
 保苅実にならって僕なりのことばで言うと、いまは、
 「勇敢に、丁寧に生きていたい」
 と思っています。>
(2021年9月9日/みずき書林ブログ「病気について」より)
「病気について」

裏を返せば「死に様」でもある。この日から、ブログでは日々の暮らしと書籍の販売促進、闘病に加え、自らの死後に関する言及も見られるようになる。ただしそれはあくまでifとしての言及だ。生きることを諦めたわけではない。

<みずき書林はこれからも続けていくつもりですが、もしこれから先、存続させることができなくなったときのことも考えておかないといけません。
 実は、継続性については、ひとり乃至小規模出版の最大の弱点であり、まだ歴史の浅い小規模出版の世界では、ノウハウが確立されていない問題でもあります。>
(2021年12月9日/みずき書林ブログ「【重要】How to close my company」より)

「長くて2カ月、短くて1カ月」

治療を続けながら、身体の状態の変化に主治医とともに注視する日々。標準治療は奏功し、季節が一巡するまでは体調の急変を防ぎ、概ね病状をコントロールすることができた。

<検査の結果が劇的に改善されたとか、病状が大きく好転したとか、そういうことはない。残念ながら。
 ただ、喜ぶべきこととして、この数カ月間、現状維持ができている。
 (略)
 はじめて病気についてこのブログに書いたときに、僕は「死ぬ死ぬ詐欺」ということばを使った。あれから9か月が過ぎ、スキルス胃がんのステージ4という病気は僕に限ってはまだトップスピードを出しておらず、いまのところ、その死の速度を振り切って逃走中と言っていい。早ければ半年以内、ということもおそらくはありえたのだから。>
(2022年5月29日/みずき書林ブログ「生きちゃうかもしれない。」より)
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