45歳で逝った出版社社長の「死を噛みしめた言葉」 本の制作に生きた男が残した1200の投稿

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著者や編者だけでなく、冨五郎さんのように取材を通して一方的に知る人物にも、深く思いを馳せて営みを進めていける。そうした日々を渇望していた。

最初期のブログからは、資金や今後の展望などに不安を抱きつつも、思い描いていた仕事ができている高揚が伝わってくる。1年半後には、出版の専門家として大学の非常勤講師を務めるようになり、活動範囲も人のつながりも順調に広げていった様子だ。

暗雲は突然訪れた。

退院から間もなくして病状を公表

2021年8月15日、激しい腹痛に襲われた岡田さんは入院することになる。すぐに腸内の通り道が塞がれる腸閉塞が起きていると判明し、大腸の右半分を切除する緊急手術を受けた。手術は無事成功。ところが、入院13日目に主治医から予想だにしない病状が告げられた。

<希望は常にある。
 でも、
 なにを感じればいいのかわからない。
 悲しいわけでも、苦しいわけでもないし、冷たくも熱くもない。
 ただ空疎というか、無に近い。
 なにも感じたくない。
 なにかを感じるのが怖くて、無意識に感じたり考えたりすることを避けているような感じ。>
(2021年9月6日/みずき書林ブログ「からっぽ」より)

退院後もしばらくは心が定まらない日を送ったが、やがて自分の中で方針が固まる。

<みずき書林/岡田林太郎に関わってくださる皆さまへ
 先月の15日から31日まで、腸閉塞で入院していました。
 開腹手術をして大腸を半分ばかり切除しましたが、おかげさまで手術は成功し、いまは退院して日常生活に戻っています。
 ただ、その治療と検査の過程で、胃に癌が見つかりました。
 スキルス胃癌という進行の早い厄介な癌で、それがすでに大腸に転移していました。つまり、ステージ4です。>
(2021年9月9日/みずき書林ブログ「病気について」より)
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