もちろん病院でのリハビリは行われたが、退院する時、多江さんは自分で歩くことはできなくなっていた。骨折する前のように、自宅で一人暮らしは難しい。
姪の松本恵子さんは次のように語る。
「叔母(多江さん)は神奈川県に住んでいて、私と父(多江さんの弟)は岩手県に住んでいます。叔母の自宅復帰は難しく、かといって神奈川県の施設に入ってもらったのではお見舞いなど、なにかと不便です。父と相談した結果、思い切ってこちら(岩手県)に来てもらうことにしました」
とはいえ、車いすを使う高齢者の長距離移動は、素人の松本さんには荷が重い。病院のソーシャルワーカーと相談して、退院後の準備を整えていった。
「岩手県の施設探しは98歳の父がやりました。父にとっては子供の頃から可愛がってもらったお姉さんですから、かなり真剣に探してくれたようです」(松本さん)
その結果、リハビリに力を入れる民間の介護施設を押さえることができた。
退院後は介護保険サービスの利用が必須だ。そのため、相模原の病院では多江さんの要介護認定の手続きが進められた。3カ月の入院生活で、身体機能はもとより、認知機能もかなり低下していた。多江さんは「要介護4」と判定された。
その手続きと同時に行われたのが、神奈川県の相模原市から岩手県までの、距離にして約530キロもの長距離移動を助ける、ツアーナースの手配だった。
「病院のソーシャルワーカーさんがほうぼうに問い合わせてくれて、『日本ツアーナースセンター』を探してくれたんです」(松本さん)
ツアーナースの付き添いで岩手を目指す
病院のソーシャルワーカーを通して日本ツアーナースセンターの細山理恵看護師に搬送付き添いの依頼が来たのは2023年の9月上旬だった。細山看護師は次のように話す。
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