独居の100歳女性、530キロを長距離移動した真相 ツアーナースの付き添いで神奈川から岩手へ

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玄関では、顔見知りの配達員がお弁当をぶらさげて待っていた。

「こんにちは、今日はブリの照り焼きです」

「毎日ありがとう」

「何か御用はありませんか」

そんな言葉を交わしているうちに昨日回覧板が来ていたことを思い出した。

「そうだ、回覧板、お隣に持って行ってくれる?」

「いいですよ」

「いつもごめんなさいね」

台所に置いてある回覧板を取りに行こうと振り返った時、多江さんは上り框に足先を引っ掛けて転んでしまった。

「大丈夫ですか」

慌てた様子の配達員に抱えられるように助け起こされた。立ち上がって2~3歩、歩いてみた。うん、なんでもないみたい。多江さんは、そのまま自分で歩いて台所から回覧板を持ってきた。

診断結果は「大腿骨頸部骨折」

異変を感じたのは翌日だった。訪ねてきたご近所の茶飲み友達に「歩き方、変じゃない」と指摘されたのだ。

「そうかしらね」

「うん、どう見ても変よ、左足を引きずってる」

言われてみると足の付け根に違和感がある。すぐに地域の民生委員に連絡を取り、自宅まで来てもらった。確かに歩き方がおかしい。とりあえず病院に連れていきたいのだが、長く歩かせるのは危険だ。民生委員はその場で救急車を呼ぶことにした。

病院で診察を受けた結果、多江さんは左足の大腿骨頸部骨折と診断された。骨盤と足の骨の接続部分が骨折していたのである。手術が必要なケガだ。多江さんはそのまま緊急入院となった。

担当の医師は次のように説明したという。

「高齢になると痛みを感じる機能も衰えます。骨折してすぐは大きな違和感はなかったのかもしれませんが、このまま放っておくと、もっと大変なことになっていたと思います」

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