たとえば新たな幹線道路建設の構想が政府にあるなら、今こそその時期だと判断すべきだ。仮に、幹線道路の建設に10億ドルかかり、無期限に通常の保守・修理が必要となり、毎年社会に生み出す予測純受益が2000万ドルだとすると、長期的な実質金利が3%では、採算が取れない。金利負担が便益を上回るからだ。しかし長期の実質金利が1%であれば、政府は資金を借り入れ、建設を実行すべきだ。これは健全な投資だと言える。
米国の30年インフレ連動国債利回りは、2000年に4%を上回っていたのが、今年5月4日には0.86%に下がっている。ほかの多くの国々も同様だ。
「インスピレーション効果」の効力
1929年以降に米国が最も目覚ましい経済成長を経験したのは、1950年代と1960年代だ。当時の政府は、州間幹線道路システムに多額の資金を投じた。着手したのは1956年だった。いったん州間幹線道路システムが完成すると、人々は時速75マイル(約120キロメートル)で高速道路を走り、国土を縦横に移動して、商業の中心地との行き来ができるようになった。
今日の米国経済は相対的に堅調さを示している。その背景には、注目すべきインスピレーションを生み出している状況があるようだ。シェール革命は、一般的に米国で始まったと考えられているが、おかげでエネルギー価格が下がり、外国産石油への依存度が低下した。また、近年の通信技術の急速な進歩は、大部分をスマートフォンやタブレットのハードやソフトなどの技術革新に負っているが、これらの技術も米国が生み出した。
政府が支出を増やせば、景気をさらに刺激する可能性がある。世界中で複数の国々が政府資金による宇宙開発プログラムを打ち出し、大きなインスピレーション効果を生み出している。もちろん、先導したのは官僚ではなく科学者だ。
しかしこのようなプログラムには、資金の出所が政府か民間かを問わず、人々の心理に変化をもたらす力がある。人々はそこに、偉大な未来に向けての夢を託す。そしてインスピレーションには恐怖心を和らげる効果がある。恐怖心は、ルーズベルトの時代と同様に、今も経済発展にとっての大きな障害なのだ。
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