米国の第32代大統領ルーズベルトは、大恐慌の真っただ中で就任演説を行い、「われわれが恐怖すべきことはただ1つ、恐怖そのものなのである」と訴えた。1933年3月当時、不況の具体的な原因があったわけではなく、問題は人々の心の中にあった。
今日もこれと同じことが起こっているのではないだろうか。2008年の世界金融危機からすでに7年が経つにもかかわらず、世界経済は多くの問題を抱えたままだ。
恐怖心という重荷
恐怖心が原因で、個人は支出を差し控え、企業は投資を抑制している。その結果として景気が低迷し、人々は恐れたことが的中していると思い込み、さらに支出を控えるようになる。景気の沈滞がさらに悪化し、失望の悪循環が根付くようになる。すでに金融危機を脱したにもかかわらず、この危機が心理面に与えた悪循環から抜け出せないでいる。
グーグルで調べると、「フィードバックループ」(負の連鎖)という言葉が出版物の中に頻繁に現れ始めたのは、1930年代後半の大恐慌の頃で、主に電子機器に関連して使われていた。また1948年になると、偉大な社会学者のマートンが、「自己成就予言」と題する小論を書いて、「自己成就予言」という言い回しが広まった。マートンが典型例に挙げたのが、大恐慌だった。
しかし今や大恐慌の記憶は薄れつつあり、多くの人々は、今どきこんなことが起こりうるなどとは想像もしないだろう。そしてきっと、景気の低迷はフィードバックループよりもっと具体的な原因があって生じているに違いない、と考えているだろう。
しかしこれは間違いだ。金利が最低水準に張り付いているにもかかわらず、投資が急拡大していないことが、如実に示している。
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