5月27日早朝にFIFA(国際サッカー連盟)幹部7人がスイスのホテルで逮捕された。唯一の驚きは実際に逮捕できたことだ。高価なスーツに身を包み、世界のサッカー連盟を牛耳っている傲慢な男たちには、法の支配が及ばないとみられていた。賄賂、不正リベート、投票不正操作、いかなるうわさや報道が流れても、ブラッター会長たちには、いつもかすり傷一つない様子であった(6月2日にブラッター会長は会見し、辞意を表明した)。
現職FIFA幹部や過去の幹部9名(ブラッター会長を除く)を含む14名が米国で詐欺および収賄罪で起訴された。容疑は1億5000万ドルの賄賂と不正リベートなど。スイス連邦検察は、2018年のロシア、22年のカタールのW杯開催決定時の裏取引についても調査している。
腐敗の歴史の始まり
FIFAをマフィアになぞらえ、スイスの小さな町で生まれたブラッター会長を「ドン・ブラッタオーネ」と呼ぶ者もいた。チューリヒのFIFA本部から殺人の契約が発表されたことはない。しかし、FIFAの秘密主義、運営を行うライバルへの脅迫、利益提供、賄賂、負債依存は、犯罪組織とそっくりだ。
腐敗の始まりはブラッターの前任のブラジル人、アヴェランジェ会長時代だ。彼は発展途上国の参加を増やし、マーケティングとメディア契約で稼いだカネを使ってそうした国々の票を買い、FIFAを堕落した金満帝国へと変貌させた。
コカ・コーラやアディダスからの多額の資金がこのシステムを通って、世界有数の実力者であるアヴェランジェ本人の大きなポケットへと流れ込んだと報じられている。コカ・コーラは1978年のアルゼンチンW杯のメインスポンサーだった。当時のアルゼンチンは、残忍な軍事政権が統治していた。
ブラッターはアヴェランジェよりは洗練されている。表向きギャングと手を組むことはしなかった。しかし、彼の力も西欧以外の国々の票に依存しており、彼らの忠誠心はテレビ放映権と商業上の特権を約束することで保証されていた。
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