大谷翔平も?「トミー・ジョン手術」が急増したワケ 日本のエースは高校時代から肩肘を酷使してきた

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しかし、靭帯を損傷した若い投手はアメリカよりも多い。甲子園に出場するような投手の大部分は、「野球肘」や「靭帯損傷」の痕があるとされる。日本には、アメリカの「ピッチスマート」のような厳格な「球数制限」は存在しないし、永らく「投手は投げ込みで球威や制球力をつけるもの」という考え方がアマチュア野球界を支配していたからだ。

NPBからMLBに移籍する投手は、メディカルチェックをすれば、かなりの確率で肘の靭帯や肩に損傷が見つかる。高校時代から日本のエースは多くの球数を投げ、肩肘を酷使してきたからだ。今年、メッツに移籍した千賀滉大も、球団は「メディカルリポートに不安材料があった」と発表し、これが年俸交渉に多少影響したものとみられる。

それでも損傷が深刻でなければMLBで投げることになるが、MLB球団にとっては日本人投手が靭帯を損傷してトミー・ジョン手術を受けることは半ば「織り込み済み」になっている。これまで五十嵐亮太、田澤純一、松坂大輔、和田毅、藤川球児、ダルビッシュ有、前田健太などがアメリカでトミー・ジョン手術を受けている。

進化してきたトミー・ジョン手術

例外的に、2013年、ヤンキースに移籍した田中将大は、2014年7月に右肘靭帯の部分断裂が見つかったが、トミー・ジョン手術はせず、自らの血小板を患部に注射して自然治癒を促すPRP療法を選択した。以後も田中は一線級の投手としてMLB、NPBで活躍しているが、これはレアなケースと言えよう。

ただし、PRP療法以降、田中の決め球だった「ギアチェンジ」と呼ばれる剛速球はみられなくなった。なおPRP療法はトミー・ジョン手術と併用されることも多い。

トミー・ジョン手術が生まれてからそろそろ半世紀になる。この間に手術そのものも進化し、人工靭帯(インターナル・ブレース)を使うなど、新たな技術も取り入れられ、手術の成功率が上がるとともに、リハビリの期間も短縮しつつある。

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