大谷翔平も?「トミー・ジョン手術」が急増したワケ 日本のエースは高校時代から肩肘を酷使してきた

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しかし、投球強度が上がれば、肩肘への負担は当然大きくなる。肘の靭帯はトレーニングで鍛えることが難しい。限界を超えれば、損傷、あるいは断裂してしまうのだ。

また、ある種の「変化球」を多投することも靭帯の損傷を招くと言われている。近年、さまざまな変化球が編み出されていることも、トミー・ジョン手術増加につながっている可能性がある。

無理をして靭帯損傷するケースが続出

とりわけ深刻なのは、プロ入り前の10代の選手たちだ。アメリカでは、高い順位でドラフト指名されれば100万ドルを超える高額の契約金を得ることができる。

ある種のブローカーが、資質に恵まれた若い選手たちをMLBのスカウトの前でプレーさせる「ショーケース」と呼ばれるイベントがアメリカ各地で行われるようになった。その結果として、隠れた逸材が発掘されはしたが、同時に、高速のボールを投げようと無理をして靭帯損傷するケースが続出、10代、20代前半でのトミー・ジョン手術を受ける例が急増したのだ。

また「若いうちにトミー・ジョン手術をした後のほうが靭帯が強化されて、球速が上がる」という風説が流れて、大きな損傷がないのに手術を受ける若者も増えたという。専門家はこの説を全否定している。

今は「ショーケース」のようなイベントは規制されているが、アメリカではトミー・ジョン手術を受けることが珍しいことではない。

日本でもトミー・ジョン手術を受ける投手は増えているが、その数はアメリカに比べれば圧倒的に少ない。

日本野球では「人体にメスを入れるのはもってのほか」という認識があるうえに、手術から1年以上ものリハビリ期間ができてしまうことを忌避する気持ちが強いのだ。

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