趣里の迫真演技が伝える「貧困に喘ぐ女性の現実」 ドラマ「東京貧困女子。」監督×脚本家対談【前編】

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役者さんってすごいですよね。このセリフは、書いた時点でも十分つらかったんですけど、撮影で東風さんの体を通して絞り出される様を目の当たりしたときには、口に出すだけで何かが崩れしまいそうな葵の心情がありありと伝わってきたんです。自分で予想していた以上の衝撃を受けました。

誰もが絶対善でもなければ絶対悪でもない

青木:実は﨑田自身も、かつては「何もわかっていない側」に立っていて、その彼が貧困について目を開かされるきっかけとなった重要人物が登場します。強い女性なんだけど、「逃げる」がキーワードになっていて、でもその「逃げる」は決して後ろ向きなものではない、その点で、一番扱いが難しく、残された﨑田にとっても、その後の生き方・考え方に大きく影響してくる忘れられない別れが描かれます。

フリーの風俗ライター、﨑田祐二(三浦貴大・演)の過去に大きく影響を与える人物を演じる高田夏帆さん(写真:WOWOW)

高羽:先ほど、摩子は何もわかっていないと言いましたが、﨑田も決して完璧な人間ではありません。その過去の一件以降、貧困問題に対しては感度が高くなっているとはいえ、言葉も態度も無神経だし、どこか女性蔑視的なところもあって、おまけにコミュニケーション不全気味です。

世の中の複雑で不思議なところを表現したい(写真:WOWOW)

人間には誰しも、いいところ、悪いところ、いろんな側面があって、互いにかかわり合ったときに、いい結果を生むときもあれば悪い結果を生むときもある。摩子と﨑田の関係性もそうだし、貧困女性と周囲の人たちの関係性もそうです。

そういう世の中の複雑で不思議なところを表現したいという思いもありました。誰もが絶対善でもなければ絶対悪でもない。いろんな種類、いろんなレベルの善悪がないまぜになっているのが人間であるというのは、脚本執筆で特に意識したことの1つです。

この記事の後編三浦貴大の神セリフ「貧困は個人の問題じゃない」

青木 達也 監督

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あおき たつや / Tatsuya Aoki

大学卒業後、制作会社でバラエティやドラマの制作に関わる。ドラマでは主に中山史郎監督に師事し、助監督として多くの作品に参加。連続ドラマやSPドラマを経験し、2011年テレビ東京ドラマ24「ここが噂のエル・パラシオ」で監督デビュー。その後、読売テレビ「遺産相続弁護士・柿崎真一」やテレビ朝日「トットちゃん!」、FOD「JOKER×FACE」、日本テレビ系「ノンレムの窓」、テレビ東京系「週末旅の極意〜夫婦ってそんな簡単じゃないもの〜」などを監督。2022年よりフリーランスとして活動の幅を広げている。

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高羽 彩 脚本家

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たかは あや / Aya Takaha

早稲田大学在学中、2005 年にプロデュースユニット「タカハ劇団」を旗揚げ。以降、全ての主宰公演で脚本・演出を務める。日常に普遍的に存在する小さな絶望や、どんな壮絶な状況でも変わることのない人間の些細なあり方、生き方を笑い飛ばしながら掬い取るリリカルでクールな作風。主な作品に【舞台】『耳なし芳一』脚本、『魔法使いの嫁』脚本・演出、【TV】NHK『ここは今から倫理です。』『千住クレイジーボーイズ』、【ラジオ】NHK-FM「青春アドベンチャー」、【アニメ】『サイコパス』『魔法使いの嫁』シリーズ、【ゲーム】の構成・脚本、【書籍】『PSYCHO-PASS サイコパス』(角川文庫)、【雑誌】月刊文芸誌『すばる』でコラム連載など。

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