趣里の迫真演技が伝える「貧困に喘ぐ女性の現実」 ドラマ「東京貧困女子。」監督×脚本家対談【前編】

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青木:それが摩子だったんですね。他に印象に残っている登場人物はいますか?

高羽:どの登場人物にも思い入れがありますね。「絶対にこの人を最初にしよう」と思ったのは、医大に通いながら風俗バイトとパパ活をしている広田優花(田辺桃子・演)です。そのモデルとなった実在の人物は書籍でも最初に登場しますが、彼女のインタビュー記事がウェブで公開されると、コメント欄が非難や中傷で荒れてしまう。もちろん衝撃も怒りも感じました。ただ、そんなふうに荒れるコメント欄にこそ、彼女たちを取り巻く社会の限界値みたいなものが露呈されている気がしたんです。そこに一石を投じたいと強く思いながら、優花の回を書き上げました。

医大に通いながら風俗バイトとパパ活をする女子大生を演じる田辺桃子さん(写真:WOWOW)

青木:医師を目指して真面目に勉強したい。周りの子たちと同じように部活にも参加したりと、普通に大学生活を楽しみたい。それだけなのに、なぜ彼女ひとりが貧困を背負わなくてはいけないのか。そう考えると、やっぱり日本社会は何かおかしなことになっていると思わざるをえませんよね。

「こんな私がお母さんでごめんね」

青木:僕もすべての登場人物が興味深いですが、強いて挙げれば、第2話に登場する村上葵ですね。東風万智子さんに演じていただきました。このキャラクターは、言ってみれば「摩子が行き着くかもしれない悲惨な未来像」です。つらいセリフも多く、強烈に印象に残っています。

高羽:そのなかに、自分は「人間」ではなく、体を売っている相手の好きなように扱われる「モノ」であり、「人間扱いされないような私が、あんたのお母さんでごめんねって……」と、何も知らない息子への思いを吐露するセリフがあります。

自身の学歴を悔やみながら働くシングルマザーを演じる東風万智子さん(写真:WOWOW)
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