バルミューダ、スマホ撤退でも失速続く苦しい背景 主犯は「すべて」、キッチン関連でも大きく後退

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ところで先日より、多くのメーカーが家電の苦戦を伝えているのは、たしかにそのとおりだ。先日、パナソニックも2023年度第2四半期の決算を発表した。アジアや中国での需要減少によって減収となった。

また、中国の不動産バブル崩壊に端を発する世界不況を予想する向きもある。国際的には金融の引き締めから、消費者の支出に、さらにブレーキがかかるかもしれない。

ただ、とはいえ、バルミューダの減少幅が激しいのは気になる。というのも、日本電機工業会が発表した2023年1~9月の国内出荷額は1兆9317億円と減っている。減ってはいるものの、前年比98.5%だ。バルミューダの減少幅ほどではない。また、もちろん円安は苦しいかもしれない。

稼げる事業がない現状

しかし、コストの苦しさだけではなく、日本国内の売上高も大幅に減少している点が気になる。途中で説明したとおり、中心の事業と考えられるキッチン領域でも減少しているのだから。1つの事業が苦しくて足を引っ張っている、というよりも、現状では稼げる事業がない。

なお同社は決算発表の最後に「小型風力発電機の開発」をあげている。もちろん期待はできると思う。そして期待をしたいとも思う。ただ、本筋は、まずは本業のキャッシュの流出を止める。人材の圧縮も現時点ではやむなし。そのうえで、キッチン関連を復活させることだろう。家庭用の商品強化を図る。

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実際に4万円を超すホットプレートはさまざまなメディアで話題になったし、予想を超える売上になっている。生活者の質の向上に寄与する商品ならば、日本の消費者に着実なニーズがあるのだ。商品力の提案の維持は欠かせない。

そもそも、同社が狙っていた市場は、ニッチで消費者を選ぶ、しかしながらロイヤルティー(忠誠心)が高く商品単価も高い領域だったはずだ。多少の不景気や消費マインドの変化はあったとしても、継続して選んでもらえる“指名買い”に強みがあった。

そして、同時に他施策の展開も必要かもしれない。たとえば業務用への進出や、アジア以外の輸出・現地展開などだ。日本+家電+オリジナリティならば、まだ勝負は可能だろう。

もともとトーストあたりでは、バルミューダの、尖った、スタイリッシュでスマートなイメージを抱いていた消費者が多かったように思う。それが現在では、スマホ事業の撤退あたりから、さほどそういったブランドイメージをもっている消費者は少ないように思える。なかなか家電の分野でラディカルなイメージをもち続けるのは難しいかもしれない。ただ、それでも同社の健闘に期待したい。中国メーカーのように単なる量産型ではない、家電メーカーの新たな姿がそこにあるのだから。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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