遠藤 毎年「Kumamoto Education Week」というオンラインのイベントを続けていて、ここでも、モデルになるようなプログラムをいくつか公開しています。
宮田 教育へのアクセスをどう広げていくかという点からも興味深いイベントですね。
遠藤 前回も触れましたが、これまで技術的にできなかったことが、できるようになっている。1人1台の端末を持っていれば、クラス全員の意見をあっという間にシェアすることもできます。
順番に発表してもらって、他の人はそれを聴きながら待っているというこれまでの授業では、手を挙げて意見を言うのはハードルが高いという子もいます。そうした子でも、みんなに自分の意見を見てもらえて、ちゃんとフィードバックを得られるという技術ができている。
また、オンラインの環境があれば、自宅や病院からでも授業に参加できます。それを活かさない手はないだろうと考えて、いろいろな技術を試そうとしているところです。
不登校の子に、自律走行できるロボットの遠隔操作を介して授業に参加してもらうとか、VR技術を使って授業に参加してもらうといった実験です。これらは文科省からお金をいただいてやっています。
宮田 教育行政の可能性も、テクノロジーの発展で広がっていると。
遠藤 10年前には、授業中にタブレット端末で疑問を調べることはできなかった。それがいまでは誰でもできるようになっています。これは大きな変化だと思いますし、教育を大きく変えていく要素になるでしょう。
これから人が身につけるべき資質とは
宮田 これから人生100年時代を生きる子どもたちに必要な資質、能力についてはどうお考えですか。
遠藤 それは、私にはわからないですね。誰にもわからないのが人生100年時代なんでしょう。
必要な資質・能力は変わっていきます。例えば、これからの時代は、暗記ではなく、思考力や課題解決能力が必要だと言われてきました。しかし、それも怪しくなってきた。
東大の入学試験で、ある絵を示して、その絵を英語で説明しなさいという問題がありました。まさに、単語や文法の暗記力ではなく、思考力、判断力、表現力を問おうとしたものです。