LIXIL、優良子会社はなぜ破産したのか 異変を告げた銀行の「督促状」
ジョウユウは、2014年1月に水栓金具の世界大手・独グローエを買収した際、その子会社として手に入れた。過去5年間で売り上げを2倍に伸ばし、営業利益率も2ケタ台。中国全土に4000店の販売網を持ち、中国市場への橋頭堡となるはずだった。また、福建省に持つ大規模な生産拠点でLIXIL傘下のほかのブランド製品も生産し、コスト競争力を高める原動力にするという青写真もあった。
「ジョウユウからの支払いがない」──。不正発覚のきっかけは4月13日、中国のある銀行からLIXILに届けられた一通の督促状だった。
買収当初、グローエとジョウユウは出資比率が5割以下の持ち分適用会社だったが、4月1日に株式を追加取得し、両社を子会社化したばかり。寝耳に水ともいえる通知を受けて特別監査を実施すると、売上高や負債、手元現金などの額に、財務報告とは大きな乖離があると判明。監査から1カ月足らずで破産手続きに追い込まれた。
日系金融機関から巨額の与信
ジョウユウはLIXIL傘下に入ったことを生かし、日系金融機関からの巨額の与信を獲得している。同社の2013年12月期の売上高は約3・6億ユーロ(約500億円)だが、2014年7月末には香港子会社が三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行の3メガバンクから、計3億ドルの融資枠を取り付けた。
そのうち1・5億ドルは実際に借り入れが行われ、野村ホールディングス傘下のノムラインターナショナル(香港)がアレンジする銀行団借り入れと、英スタンダードチャータード銀行からの借り入れの返済に大半が充てられた。さらに2014年末までに8000万ドルの借り入れも行い、セラミック工場などの生産設備増強に投じられた。
ジョウヨウが融資枠を得たのはLIXILの子会社となる前だが、今年4月に特別監査を始めた後、メガバンク3行からの要求があったため、LIXILはこの借入の債務保証に応じた。今回計上する損失660億円のうち、債務保証にかかわる特別損失が半分を占めており、残りはジョウユウの株式価値分になる。
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