日本で「クマ被害」なぜ増加?1つの興味深い視点 野生動物との「付き合い方」を見直す分岐点に
そのため、北海道では、クマの目撃情報や、糞や足跡などの痕跡が見つかれば、行政が取りまとめてマッピングし、一般に公開している。場合によっては公園やキャンプ場を一時的に閉鎖することもある。
この夏、筆者の地元の中学生が課外授業で訪れるはずだった自然公園で、直前にクマの糞が見つかったため、課外授業が中止となったこともある。ヒグマの糞は大きく、他の野生動物とは段違いなのですぐにわかる。糞を見れば、何を食べたのかもだいたいわかる。
筆者がよく見るのは、春先であればフキの繊維が残った白っぽい糞や、サクラの実を食べたと思われる種がたくさん残った黒っぽい糞。いずれにしても、木の実や野草を食べているようだ。
しかし、クマが草食であることは必ずしもいいことばかりではない。里に下りてきて農作物を食べる個体も出てくるからだ。特に好物なのはデントコーンという飼料やデンプンに使われるトウモロコシで、農作物被害の約55%を占める。北海道によれば、2021年度のヒグマによる農業被害額は2億6000万円を超えて過去最高となった。
ドングリの凶作のために人里へ
では、なぜクマが里に下りてくるのか。それはやはり、山の中で十分に食料を得られないからだと考えられる。ヒグマは巨体であるため、木の実で腹を膨らまそうとすれば大量の数が必要だ。特に秋口には、冬眠に備えて脂肪を蓄えなければならない。
そこで重要となってくるのが、秋の主食となるドングリである。ドングリは、ナラ、シイ、カシといったブナ科の樹木の実であるが、年によって豊作であったり、凶作であったりするという特徴がある。今年のようにドングリが凶作の年には、クマたちは食べ物を求めて里に出てくる可能性が高まる。
もう1つヒグマの好物として知られているのが、コクワ(サルナシ)の実。つる性植物で、晩秋に直径3~4センチの緑色の実をつけるが、皮ごと食べるとキウイのように甘酸っぱくてとてもおいしい。しかし、つる性植物なので、木の高いところにまで登らないと手に入らないため、意外と食べる機会に恵まれない。
去年の冬の初め頃、山で木を伐倒していたとき、倒したエゾマツにたまたまコクワが巻き付いていて、偶然コクワの実にありついたことがある。時期的に完熟しており、シャーベット状に凍っていてうまかった。
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