日本で「クマ被害」なぜ増加?1つの興味深い視点 野生動物との「付き合い方」を見直す分岐点に

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そのとき、大先輩から「コクワはヒグマの食べ物だから、あまり食べすぎないように」と注意を受けたのが印象的だった。山は本来、人間ではなくヒグマをはじめとする野生動物の領分である。そこで得られるものは、人間が第一に食べていいものではない。味見程度にとどめておけ。そうしなければ、今度は山の生き物たちが里に下りてきて人間の作ったものを食べにくるぞ――ということなのだ。これこそが、人間と野生動物の領分(なわばり)についての基本的な考え方だと思う。

エゾシカがヒグマの食料を食べてしまう

北海道の酪農家に恐れられたヒグマに「OSO18」と名付けられた個体がいる。OSO18は2019年から、標茶や厚岸といった道東地域を中心に66頭もの乳牛を襲っている。

警戒心が強く、しかけた罠にもかからず、対策に苦慮していたところ、今年の7月、釧路町のハンターによって偶然仕留められた。後のDNA鑑定によってOSO18であることが判明したのである。

本来は草食性であるヒグマがOSO18のように動物を意図的に狙って襲う事例は特殊であり、一般的ではないが、その原因として指摘されているのが、増える一方のエゾシカだ。

エゾシカがヒグマの食料となる木の実や山菜を先に食べてしまうこと、さらにエゾシカの死骸をヒグマが食べることで肉食化する傾向が強まるのではないかというのだ。

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