日本で「クマ被害」なぜ増加?1つの興味深い視点 野生動物との「付き合い方」を見直す分岐点に

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縮小

春グマ駆除活動中止直後の1990年の道内ヒグマ推定個体数が5200頭で、現在1万頭を超えているから、春グマ駆除中止は、ヒグマ個体数増加の原因にもなっていると考えられる。

北海道では、近年のヒグマ出没件数、ヒグマ被害の増加を受けて、春グマ駆除活動を再開すべきではないかとの意見も増えてきているようだ。しかし、そもそもハンターの数が減ってきているという問題もある。つまり、野生動物の生活圏に近い山間部の人口減少とも関連していることになる。

農村部の過疎化がヒグマ被害の増加に?

大きな視野で見てみれば、日本社会の人口減少によって、特に農村部の過疎化が進み、それが人間社会のなわばりを縮小させている、とも言えるのではないだろうか。

つまり、ヒグマをはじめとする野生動物被害の増加は、日本社会の縮小という現実を反映している。私たちは日本社会の縮小という現実に適応し、野生動物との距離感を改めて考え直さなければならない地点に立っている。

ヒグマやエゾシカは、何かの間違いで都市部に入ってきているのではなく、当たり前のようにすぐそこにいるというのが現実になりつつある。ヒグマが人間を警戒するように、人間も野生動物を警戒しなければならなくなっている。この現実は、人間が圧倒的優位に立って野生を脅かしてきたこれまでのあり方に疑問符を突き付けているのだ。

亀山 陽司 著述家、元外交官

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かめやま ようじ / Yoji Kameyama

1980年生まれ。2004年、東京大学教養学部基礎科学科卒業。2006年、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修了。外務省入省後ロシア課に勤務し、ユジノサハリンスク総領事館(2009~2011年)、在ロシア日本大使館(2011~2014年)、ロシア課(2014~2017年)など、約10年間ロシア外交に携わる。2020年に退職し、現在は森林業のかたわら執筆活動に従事する。北海道在住。近著に『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』(PHP新書)、『ロシアの眼から見た日本』(NHK出版新書)

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