田舎の山に「草食系クマ」が増加した意外な背景 野生動物の「グルメ化」が止まらない
ここ数年、野生動物が街に出没してよくニュースになっている。都市圏でこそ非日常的なニュースになるのだろうが、田舎にとってはもはや日常茶飯事である。
野生動物が山を下りる理由としてよく言われているのが「山にエサがない」というものだ。しかし現在、多くの野生動物の生息数が増加したことは、専門家も認めている。増えたからこそ、新たな生息の場を求めて街に姿を見せ始めたのだろう。
ここで生息数が増えた決定的な原因を示すのは難しいが、その理由の1つとして「エサが増えたこと」だけは確実に言える。エサがなければ、仮になんらかの理由で生息数が増えても、その個体は生き延びられず繁殖もできない。増え続けるのは、十分なエサが恒常的に存在するということだ。
もし山野の植物が繁茂して量が増えたら、草食性や雑食性の動物にとってエサが豊富になったと言えるかもしれない。そして草食動物が増えたら、肉食動物のエサも増えたことになる。つまり、野生動物は飽食の時代を迎えたのではないだろうか。
具体的に植物性のエサが増えたかどうか検証してみよう。
「人工林にエサがない」のは本当か?
まず奥山はどうか。本来の奥山は天然林に覆われていたが、現在は多くが人工林になった。植えられたのはスギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹。一般に針葉樹はエサとなる実をほとんど付けない。それに林内は暗くなり下草も生えない。だから「奥山の多くを人工林にしたから、野生動物のエサがなくなった」と主張される。そして「野生動物は増えたのではなく、(エサのない奥山から)エサを求めて里に下りてくるのだ」と解釈するのだ。
しかし、私は「人工林にエサがない」という主張に、かなり疑問を持っている。本当に人工林をよく観察したのか。私は全国の林業地を見て歩いているが、意外と絵に描いたような「林内は暗くて草一本生えていない」ところは多くない。スギ林はスギだけ、ヒノキ林はヒノキだけしか生えていないと思い込みがちだが、そうでもない。
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